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2022年8月2日(火)

防衛省 セクハラ相談最多138件

宮本徹議員への提出資料で判明

識者「実態反映せず」

グラフ

 防衛省の相談窓口などに寄せられたセクハラの相談件数が、2021年度に138件に達し、11年度以降最多となったことが、防衛省が日本共産党の宮本徹衆院議員に提出した資料で明らかになりました。

 相談件数は、防衛省の内局職員が直接対応を行う「防衛省セクハラホットライン」(10年設置)と、陸海空自衛隊や地方防衛局などに設置されている担当部署に寄せられた相談の合計です。21年度は前年度より19件増加。11年度比で約2・4倍に増加しました。特にホットラインへの相談件数が19年度以降、急増しています。22年4月の防衛省のセクハラ防止研修会の資料によると、相談の半数は地位を利用した上司から部下へのセクハラ行為だとしています。

 件数が増えた背景には、被害自体の増加とともに被害者の意識の変化もあるとみられます。最近では、元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが訓練中に複数の男性自衛官から受けた性被害を告発し、衝撃を与えました。ただ、性被害は被害者が申告しなければ件数に反映されません。米国防総省の性暴力に関する年次報告書(20年版)によれば、実際に申告した被害者は30%程度にとどまっていると推計しており、防衛省が示した相談件数も氷山の一角にすぎないとみられます。

 自衛官のセクハラ・パワハラ被害の裁判に携わる佐藤博文弁護士(「自衛官の人権弁護団」団長)は、1999年に防衛庁(当時)の職員2000人を対象に実施した調査では、身体接触が約6割、性的関係の強要が約2割に上っていることを挙げ、「自衛隊でのセクハラ被害は企業や他の官庁とはレベルが違う」と指摘。「実態から見て相談件数が明らかに少ない。被害を申告すると部隊に情報が広がり、かえって二次被害を招きかねない。相談窓口に第三者性も専門性もなく、調査や勧告などの実効性ある権限と結びついていないことが問題だ」と強調しました。

 五ノ井さんの事例も、加害者を強制わいせつ罪で告発したものの、現場で見ていた他の隊員が誰も証言せず、不起訴となりました。自衛隊内部だけの対応では組織的な隠蔽(いんぺい)や口止めの前に限界があり、五ノ井さんは第三者委員会による公正な審査を求めています。


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