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2022年7月19日(火)

“命が危険にさらされる”

高温・干ばつ・山火事…

世界熱波

気候危機打開 待ったなし

 「史上最高気温を更新」「大規模な森林火災が発生」―。世界各地で異常な気温上昇や熱波、山火事や大洪水、干ばつなどのニュースが後をたちません。


 国連の世界気象機関と欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、6月の世界の平均気温は平均値(1991~2020年の平均)より0・32度高く、19年、20年に次いで3番目に高くなりました。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」で掲げた、平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1・5度に抑えるには「今しかない」と指摘。「自然と人間に対して広範囲にわたる悪影響、損失と損害を引き起こしている」と述べており、気候危機への対策は、いま待ったなしの課題となっています。

 日本共産党は、早期に温室効果ガス排出量実質ゼロの実現を訴えています。21年には気候変動対策「2030戦略」を打ち出し、日本の温室効果ガス排出量を30年までに最大60%削減(10年度比)することを提案しています。

欧州各地

 【ベルリン=桑野白馬】欧州各地にも熱波が襲来し、気温が40度以上となる地点が続出しています。13日にはスペイン南部セビリアで47度を記録。ポルトガルでも連日40度超となっています。

 英国の気象庁は15日、「非常事態」に相当する最高レベルの「異常高温警報」を初めて発令。ロンドンを含むイングランド中南部で「命が危険にさらされる暑さ」になると警戒を呼び掛けました。

 深刻な被害も出ています。ポルトガルでは13日時点で、国内20カ所で山火事が発生。中部サンタレンやレイリアでは住民約700人が避難を余儀なくされました。スペインやフランス各地でも山火事が起きているほか、熱中症による救急搬送も続出しています。

 猛暑の到来時期が早まっている点も指摘されています。6月の時点でノルウェーのバナクで北極圏としては異例の32・5度を記録。フランス南西部ビアリッツでは42・9度に到達。気象局の専門家は「1947年以降、フランスで最も早く記録された熱波」と発表しました。

 ドイツやオーストリア西部、スイスの一部地域でも6月の最高気温を更新。イタリア北部では複数の自治体で給水制限が発表され、大きな影響が出ました。

9億人超に影響

中国

 【北京=小林拓也】中国では6月から各地で気温が40度を超える事態となっています。中国メディアは9億人以上が異常な高温にさらされていると警告しています。

 上海では今月13日に気温が40・9度となり、統計がある1873年以降の最高記録を更新しました。

 国家気候センターによると、70以上の観測地点で歴代最高気温を更新。河北省の石家荘市では44度以上を記録しました。

 北京も6月25日に40度を記録し、その後も気温36度前後の日が続いています。

 各地で熱中症が多発。上海や浙江省、四川省などで熱中症が原因で死亡した例が報告されています。

 中国当局は、猛暑の影響で12日の発電量が過去最高の278億5400万キロワット時に達したと明らかにしました。

大規模化を警告

米国

 【ワシントン=石黒みずほ】米国では7日、カリフォルニア州のヨセミテ国立公園で森林火災が発生しました。16日時点で延焼規模は19・5平方キロメートル。1500人以上の消防士が消火活動にあたっています。公園には巨木ジャイアント・セコイアがあり、樹齢3500年と推定されるものもあります。近年の火災で7万5000本のうち5分の1が焼失しています。

 サンノゼ州立大学の山火事学問分野研究所のクレッグ・クレメンツ局長は英ガーディアン紙に対し、気候変動の影響がさらなる悲惨な山火事を引き起こす要因になると指摘。「枯れた植物が大量に蓄積している上に干ばつが影響し、状況はさらに悪化する。夏の終わりには火事はさらに大規模になるだろう」と警告しています。

 また6月には、例年よりも早い段階で熱波が到来しました。気温が37・8度(カ氏100度)を超える地域が南西部や中西部を中心に広がりました。同11日には主要27都市で過去最高気温に達し、カリフォルニア州のデスバレーの気温は50度を記録。高温注意報や高温警報が各地で出され、対象地域の住民は1億人に上りました。現在も暑さは続きテキサス、オクラホマ、カンザスの各州では最高43・3度にも上る新たな最高温度に達すると予測されています。

穀物生産に損失

チュニジア

 【カイロ=秋山豊】北アフリカのチュニジアでは、熱波と火災が穀物生産に大きな損害を与えています。首都チュニスでは13日、気温が48度に達したと報告されました。北西部ジャンドゥーバでは6月末、麦畑1平方キロメートル以上が火災の被害を受けたと報じられました。

 チュニスの環境活動家フサム・ハンディさん(40)は本紙の取材に応じ、「気温上昇による火災だけでなく、雨の減少も穀物の成長に影響している」と語りました。ロイター通信によれば同国政府は今年、約180万トンの穀物収穫を見込みますが、農民組合の予測は約140万トンです。ハンディさんは「気候変動が進めば、アフリカで食料を手に入れるのが非常に困難になり、欧州への移民が増える」と語りました。

 ロシアによるウクライナ侵略も大きな影を落としており、同国政府は輸入食料とエネルギー価格の上昇で、今年は約17億ドル(約2351億円)の予算負担が生じるとみています。サイード大統領は穀物が盗難など犯罪組織の標的にされると警戒し、穀物を守るのは国家の安全保障の問題だと語っています。


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