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2022年7月18日(月)

きょうの潮流

 明治時代の北海道などを舞台に、日露戦争からの帰還兵とアイヌの少女が冒険を繰り広げる人気長編漫画「ゴールデンカムイ」。4月に連載が終わり、単行本の最終巻が近く発行されます▼想像を超えるスリリングなストーリー展開とともに、アイヌの生活や習俗・文化がリアルに描かれていることも読者をひきつけました。漫画をきっかけにアイヌに興味を持った人も多いようです▼「ゴールデンカムイ」で描かれたのと同じ時代に、北海道でアイヌとして生まれ育ったのが知里幸恵(ちり・ゆきえ)です。アイヌの叙事詩・ユカラを日本語に訳し、元のアイヌ語とともに『アイヌ神謡集』として編さんしました。「銀の滴降る降るまわりに…」という冒頭のフレーズが印象的です▼この時代、明治政府は先住民族であるアイヌの土地や生活の場を奪いました。強制的に移住させ、同化政策によってアイヌ文化を衰退させました。アイヌに対する差別や偏見はいまだに残り、政治家などによる暴言もしばしばです▼病弱だった知里幸恵は1922年に19歳で亡くなりました。その翌年『アイヌ神謡集』が刊行されます。序文には、「この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました」とあります▼短い生涯をかけアイヌの言葉と文学を残そうとした彼女の死から今年ちょうど100年。アイヌの文化やアイヌ語を守る取り組みは今も引き継がれています。民族の尊厳を回復し、守ろうとした知里幸恵の思いを今に生かすためにも、国の公式謝罪は不可欠です。


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