しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年7月6日(水)

参院選 大軍拡の正体

兵器のコスト増 頻発

米日軍需産業を潤す

 「日本の防衛産業の維持は長年の課題だ。日本の防衛を支える技術、産業基盤が大切だと国民に分かりやすく訴えていきたい」。公明党の山口那津男代表は6月27日に軍需品をつくる企業を視察した後、そう語りました(公明新聞同28日付)。自民党や日本維新の会などと軍事費拡大を唱えるだけでなく、軍需産業の必要性を主張するまで踏み込んだのです。

トラブルが続く

 当の軍需産業には、多くの問題があります。その一つが高コスト体質です。最近では防衛省が調達する兵器のコストが当初計画より大幅に高騰し、政府内でも問題視されています。

 財務省は財政制度等審議会の分科会(昨年11月15日)に、川崎重工が製造したC2輸送機とP1哨戒機の構想から取得、廃棄に至る「ライフサイクルコスト」の変遷を提示しました。

 C2は2009年度の見積もりが1兆7296億円でした。それが21年度の見積もりでは2111億円も増加していました。

 川崎重工の関係者は「C2は開発で苦労した。防衛省が要求する積載量を実現するためには、機体を軽くする必要があった。しかし軽くしたことで強度が不足するなどトラブル続きだった」と振り返ります。

 P1はさらにひどく、08年度の2兆2850億円が、21年度までに1兆5542億円も上昇しました。

 ライフサイクルコストが上昇した兵器は、ほかにもあります。20年度の見積もりでみると、▽SH60哨戒ヘリコプターが1兆20億円から1兆860億円に▽水陸両用車が949億円から1019億円―などです。

チェック働かず

 なぜライフサイクルコストが上がったのか―。

 財務省は、コスト管理で防衛省のチェック機能が働かず元請けの大企業まかせだったことなどを原因としてあげています。

 その結果、兵器の量産開始後に部品の価格が高騰するという事態が頻発しています。C2、P1とSH60ヘリ、UH60ヘリを財務省が調べたところ、部品の平均価格上昇率は約49・8~144・2%となっていました。

 財政審の分科会では「本当にこれで闘えるのかというぐらい、コスト管理がなっていないという状況」などと厳しい意見が委員から出ています。

 特に輸入部品の高騰が深刻です。財務省によると国産航空機といっても、4~6割が輸入部品で構成されています。しかも、ある航空機では国内部品の価格高騰が約1割増だったのに対し、輸入部品は約5割増でした。輸入の機体内ドアハンドルで価格が約10倍になった例もあります。

 軍需商社の元幹部は指摘します。「国産航空機といっても、エンジンなどは米国企業から調達するよう米国から求められる。結局、部品も米国企業から調達するようになる。国産でできるものでも高い部品を買わされる。日本は米国の属国みたいなものだ」

 軍事費を増やせば増やすだけ米日の軍需産業に吸い上げられる費用が増えていく―そんな構図が浮かびます。(三浦誠)

C2輸送機とP1哨戒機のライフサイクルコスト(LCC)の推移
機種 LCC設定時の見積もり 2021年度の見積もり 増額分
C2輸送機(22機分) 1兆7296億円(1機あたり約786億円) 1兆9407億円(1機あたり約882億円) 2111億円
P1哨戒機(70機分) 2兆2850億円(1機あたり約326億円) 3兆8392億円(1機あたり約548億円) 1兆5542億円
*C2のLCC設定時は2009年度、P1は2008年度 財務省の資料から作成

pageup