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2022年7月1日(金)

主張

香港返還25年

一国二制度の公約に立ち戻れ

 英国の植民地だった香港が1997年、中国に返還されてからきょうで25年です。返還時、中国が「50年守る」と世界に約束した「一国二制度」「高度な自治」はその半分もたたないうちに、ほごにされ、自由と民主主義、人権が踏みにじられています。香港は今やもの言えぬ社会です。中国による人権弾圧が世界から厳しい批判を浴びる中での記念日です。

言論の自由、選挙権抑圧

 香港は19世紀、英国が中国清朝から武力で奪って支配しました。英人総督が全権を握り、住民の政治参加は厳しく抑圧されてきました。ただ、返還当時は一定の言論の自由があり、立法機関の一部に直接選挙が導入されていました。

 返還時の香港は人口で世界最大の植民地でした。その返還は植民地支配の終わりという20世紀の流れに沿ったものでした。

 日本共産党は当時発表した談話で、こうした歴史的意義を評価すると同時に「香港返還が当然だということと、中国の現在の政治・経済制度を香港にそのまま適用することの是非とは別個の問題」と指摘し、一国二制度の履行や自由、民主主義の前進を求めました。

 香港では返還前から中国政府によって自由が抑制されることへの懸念が多く、世論調査でも、人権や自由が後退するとみる人が半数以上を占めていました。中国が政府批判の抑圧を公言していたからです。その後、不安は現実のものになり、今日の人権状況は返還後、かつてなかった深刻さです。

 特に2020年6月に中国が制定した香港国家安全維持法(国安法)は言論による政府批判を「国家分裂」「政権転覆」「外国勢力との結託」として禁止しました。最高刑は無期懲役です。民主活動家が次々に逮捕、起訴され有罪判決を受け、運動団体は活動停止に追い込まれました。政府を批判した新聞も休刊させられています。

 議会にあたる香港立法会には以前、限られた直接選挙枠で民主派が当選していました。しかし昨年12月に行われた選挙では、立候補にあたって中国に忠誠を誓うことが義務となり、候補者の事前審査まで導入されました。民主派は立候補すらできず、議席は「親中派」がほぼ独占しました。投票率が過去最低となったのは、有権者の抗議の意思の表れです。

 1日には香港政府トップの行政長官に、警察官僚として民主化運動の弾圧を指揮した李家超氏が就任します。国安法に加えて香港政府自らが国家安全条例を制定して「国家反逆」を禁止するとしており、抑圧の網が幾重にも張り巡らされる恐れが強まっています。

人権弾圧を直ちにやめよ

 中国は国際社会の批判を「内政干渉」として拒みますが、中国自身、世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言などの国際的な人権取り決めに署名や支持をしています。人権と自由を守り発展させることは今日、どのような政治体制であろうと国家の義務です。

 1960年の国連総会が採択した植民地独立付与宣言は、外国による支配、搾取が「基本的人権を否認し、国連憲章に違反し、世界の平和と協力の促進に障害となっている」としています。外国支配からの離脱は本来、基本的人権尊重の土台となるものです。中国は香港での人権弾圧をやめ、一国二制度の公約に立ち戻るべきです。


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