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2022年6月27日(月)

主張

理研大量雇い止め

政府は違法行為を放置するな

 理化学研究所で来年3月末に約600人の大量雇い止めの危険があるとして、同労働組合(理研労)が理研に方針撤回を求めています。しかし、理研は応じず回答を引き延ばしています。この数カ月で雇い止め当事者の約100人が理研から離職しました。

 理研労は、実質的に雇い止めが起きていると指摘し、回答引き延ばしは、不当労働行為だとして東京都労働委員会に救済を申し立てました。今回の雇い止めは、明白な違法行為です。理研は直ちに雇い止めを撤回すべきです。

文科相の容認姿勢は重大

 2013年の労働契約法18条の改正などにより、有期雇用契約が5年を超えた場合、研究者は特例で10年を超えた場合、労働者の申し出があれば無期雇用契約に転換することが使用者に義務付けられました(無期転換ルール)。

 ところが理研は労組の反対にもかかわらず、就業規則を変更し、13年を起算日にして事務系職員に5年、研究系職員に10年の雇用上限を押し付ける労働条件の不利益変更を16年に強行しました。

 この雇用上限は、無期転換権を与えないことが目的です。厚生労働省は「無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で雇い止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない」と国会で繰り返し答弁しています。

 就業規則で労働者に不利益な変更をする場合は合理的な理由がない限り認められないことが、最高裁の判例などで原則となっています。理研の雇用上限は、労働契約法の趣旨に反する脱法的な不利益変更です。雇用上限にも雇い止めにも合理的な理由はありません。

 理研は、18年にも5年の雇用上限を理由に事務系職員の大量の雇い止めの強行を企てました。しかし、労組の反対、野党の国会での追及により、雇い止めの1カ月前に5年上限を適用しないことを発表して、雇い止めを回避しました。今回の雇い止めは、法的には18年のケースと同じです。違法であることは、誰よりも理研当局自身が理解しているはずです。

 理研が雇い止めを撤回しないのは、所管の文部科学省が理研の対応を容認しているからです。末松信介文科相が、雇用上限を押し付けた不利益変更を「法人において適切に定めたもの」と国会で答弁していることは重大です。国務大臣が、国の機関における無期転換逃れの雇い止めを容認するならば、脱法、違法がまかり通る社会になってしまいます。

 来年3月末の研究者の雇い止めは、理研だけではありません。国立の大学・研究機関であわせて最大4500人の任期付き研究者が雇い止めになる危険があります。

研究力低下に拍車の危険

 文科省は18年の事務系職員の大量雇い止めの際、「対応状況に関する調査」を2年連続で実施し、労働契約法の趣旨にのっとった対応を求める「通知」を出しました。

 今回の研究者の雇い止めの危険にも、違法、脱法行為を許さない厳正な対応を求めるべきです。

 優れた能力を持ち、最先端の課題に挑戦してきた研究者の大量雇い止めは、研究力の低下に拍車をかけます。研究職はますます不人気となります。これを放置する岸田文雄政権に「科学技術立国」を掲げる資格はありません。参院選での厳しい審判が必要です。


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