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2022年6月25日(土)

参院選の対決点 くらしでも平和でも鮮明に

 戦争か平和か、物価高騰から暮らしをどう守るのか―日本の命運がかかった参院選。主要メディアが行った党首討論や公示第一声などを通じて、平和と暮らしをめぐる選挙の争点は鮮明となっています。どの論点でも、日本共産党と自公および翼賛勢力としての維新、国民民主との対決構図が鮮明で、日本共産党が論戦をリードしています。

「軍事対軍事」VS

9条いかした平和外交 「外交ビジョン」に注目

 ロシアのウクライナ侵略に乗じた軍事同盟強化、改憲や軍拡の大逆流に対して、日本共産党は憲法9条を生かした平和外交、侵略をどうやって終わらせるかの具体的な解決方向を示し、岸田政権の「軍事対軍事」の企てをやめさせるよう論陣を張ってきました。

 21日の日本記者クラブの討論会では、共産党の安全保障論がメディアの関心事に。「ロシア相手に外交努力は効くのか」という問いに、志位和夫委員長は「ロシアは侵略をやめろ、国連憲章を守れ、の一点での全世界の団結が最も力になる」と指摘。国連総会で141カ国が賛成してロシアへの非難決議を採択したことをあげ、これを「もっと広げていく努力が必要」だと述べました。

 さらに、バイデン米政権が「民主主義と専制主義のたたかい」だといって分断を持ち込んでいることについて、シンガポールのリー・シェンロン首相が「終わらない戦争に自らを置くことになる」と警告したことにふれました。

 力に力で対抗する軍事一辺倒の対応に対し、外交の力で平和を創出する道を提起。具体的な外交戦略として、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に8カ国(日・米・中・印・ロ・豪・韓・ニュージーランド)が加わる包摂的な平和の枠組み=東アジアサミット(EAS)を活用・強化し、東アジア規模の友好協力条約をつくる展望を提案。「唯一注目すべき『外交ビジョン』を掲げている」(サンデー毎日)との見方も出ています。

 一方、自民・公明・維新・国民の各党は「抑止力強化」の一点張りで、平和のための外交について、何ら語っていません。

軍事費2倍化VS

軍拡に断固反対 財源の白紙委任は許さない

 岸田政権は、米国の要求に応じ、軍事費の「相当な増額」(5月23日の日米首脳会談)を誓約。これを踏まえ、自民党は参院選で軍事費を「5年以内にGDP(国内総生産)比2%以上」を達成すると公約し、維新も「2%」を掲げました。

 軍事費を「GDP比2%以上」にするためには、現在の5・4兆円を2倍以上に増やす必要がありますが、自民などはその財源を一切示していません。

 日本共産党は当初から、5兆円を超える大軍拡を批判し、その財源は消費税増税か社会保障削減になると告発。志位和夫委員長は「ある女性週刊誌は5兆円を増税で賄えば消費税を2%以上、上げる必要がある。医療費負担にしわ寄せすれば自己負担が3割から6割になる。年金にしわ寄せすれば年金が年12万円減ると試算を出している」と指摘。「国民の理解を得られそうもない財源案は隠しておいて、選挙が終わったらフリーハンドで決めるというのはあまりにも不誠実ではないか」と批判しました(21日、日本記者クラブ主催の党首討論)。

 これに対して岸田文雄首相は「政府としては、数字ありきということは一度も申し上げていない」などとして、財源を示さないことを正当化しました。志位氏は「自民党としては2%という数字が入った公約を出している。その財源をセットで出さなかったら、民主政治とは言えないではないか」「こういうやり方では、増税か社会保障削減か、白紙委任状を求めることになる」と反論。首相は回答不能に陥りました。

「核抑止」「核共有」固執VS

「核抑止」の呪縛断ち切り核兵器禁止条約への参加こそ

 日本政府は唯一の戦争被爆国でありながら、米国の「核抑止」にしがみつき、「核兵器のない世界」を目指す流れに背を向けてきました。自民党はこうした立場を正当化する絶好の口実として、ロシア・プーチン政権による先制核攻撃の脅しを最大限に利用。「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止…の信頼性を一層確保する」として、核抑止強化を公約に掲げました。

 維新にいたっては、米国の核兵器の日本配備を前提とした「核共有」まで掲げ、松井一郎代表は「タブーなき議論」を主張しました(16日、報道ステーションの党首討論)。

 これに対して日本共産党は、プーチン政権による核使用の脅しは、むしろ核で核を抑止できるという「核抑止」の破綻であり、核兵器は人類と共存できない「絶対悪」だと主張してきました。

 志位和夫委員長は16日の報道ステーションで、「核共有」論について「日本被団協の皆さんが『日本国民を核戦争に導き、命を奪い、国土を廃虚と化す危険な提言だ』と撤回を求めている。これが被爆者の声だ」と指摘。「核抑止とは結局、いざという時には核兵器を使う。広島、長崎のような非人道的惨禍もためらわないことを前提にした議論に、被爆国日本の政府や政党がとらわれていいのか」と反論しました。

 また、政府は核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加さえ拒否。岸田文雄首相は同会議に核保有国が参加しておらず、「保有国・非保有国の橋渡しをするため」などと弁明してきました。

 しかし、同会議には日本と同じ米国の「核の傘」の下にあるドイツやベルギー、オランダ、オーストラリアなどが相次いで参加。参加団体から「日本に“橋渡し”の資格はない」との批判もあがるなど、岸田政権は完全に足場を失いました。

 志位氏は参院選公示第一声(22日)で、「日本政府に『核抑止』の呪縛を断ち切って、核兵器禁止条約に参加する決断を強く求めます」と訴えました。

物価高騰に無策VS

アベノミクス転換で実体経済をよくする政策へ

 物価高騰から国民生活をどう守るかは、参院選の最大争点の一つです。日本共産党の志位委員長は党首討論で、自公政権の経済政策の失敗に切り込みました。

 ところが、岸田首相は物価高騰についてウクライナ危機を背景に「有事の物価高騰だ」とまるでひとごとのような認識。公明党の山口代表も「安倍政権のもとで、成長と分配の好循環と言い始めたところで、コロナに見舞われた」としか答えられません。

 これに対し志位氏は、物価高騰はコロナ禍やロシアのウクライナ侵略だけでなく、「アベノミクスの『異次元の金融緩和』をやってきた結果、異常円安になり、物価の高騰になっている」と指摘。「破綻した『異次元の金融緩和』をやめ、金融頼みではなく、実体経済をよくすることを最優先に据えた経済政策に転換すべきだ」と主張し、対策の方向を示しました。

 しかし、岸田首相はあくまで「金融政策は変えるべきではない」と「異次元の金融緩和」を続ける構えです。

 志位氏はさらに、自公政権が弱肉強食の新自由主義を続け、賃金が上がらず、年金は下がり続け、重い教育費が家計を圧迫し続けていることが、より国民生活を苦しめている実態をつきつけました。

 志位氏は「労働法制の規制緩和で正社員を非正規に置き換えて、働く人を『使い捨て』にしてきた。これが競争力の低下の一番の要因の一つだ」などとして、政治の責任で賃金を上げ、社会保障と教育予算の充実をはかるよう主張。「新自由主義はもう終わりにして『やさしく強い経済』へチェンジをはかろう」と訴え、五つの提案を示しました。

 岸田首相は物価上昇のもとで年金が下がる実態を突きつけられても、「制度上想定されたもの」などと冷たく言い放つだけ。当初、口にしていた「新自由主義の弊害」という言葉は一切、使わなくなり、アベノミクスの「3本の矢」の踏襲を壊れたレコードのように繰り返すだけです。さらに、日本維新の会の松井一郎代表も「(終身雇用制は)見直すべきだ」などと述べ、右から新自由主義を推進しようとしています。

 物価高騰から国民生活を守る道はどこにあるのか―。参院選の論戦の中で、すでに答えは明瞭となっています。

消費税減税拒否VS

世界91カ国・地域が実施 5%減税ただちに

図

 物価高騰に最も有効な対策として日本共産党が求めている消費税の減税をめぐる論戦でも、すでに自公両党との決着はついています。

 岸田首相は「消費税は社会保障の安定財源だ」などと強調していますが、消費税導入から33年、社会保障は切り下げに次ぐ切り下げでした。志位氏は演説で消費税の税収は「大企業と富裕層の減税の穴埋めに消えてしまった。これが真実だ」と訴えています。

 実際、1989年の消費税創設以来の34年間で国と地方を合わせた消費税総額は476兆円にのぼりますが、国と地方を合わせた法人税は324兆円、所得税・住民税も289兆円の税収が減っています。消費税収が法人税や所得税・住民税の穴埋めに使われたのは明白です。

 自民党は消費税減税は“システム変更が大変だ”などと主張していますが、政府が導入を狙うインボイス制度こそ消費者や事業者に混乱を招いています。

 同党の茂木敏充幹事長は、消費税減税には「最低でも半年以上、1年近くかかる」(23日)と主張していますが、消費税導入時の準備期間は実質3カ月程度でした。政府・与党のやる気次第です。

 世界ではすでに91の国と地域が消費税(付加価値税)の減税を実施・予定しています。志位氏は「日本だけできない理由はどこにもない」と強調しています。

 消費税5%への減税には12・5兆円が必要ですが、日本共産党は大企業・富裕層優遇税制の是正などで19兆円の財源確保策を明らかにしています。

賃上げ具体策なしVS

内部留保課税を財源に 最賃1500円 具体策示す

 政治の責任で日本をどう「賃金が上がる国」にするのか。この問題でもすでに論戦の決着はついています。

 岸田首相は実効性に乏しい賃上げ策を並べたて、「今年の春闘でも2・08%という高い給料の引き上げの数字を示している」などと繰り返しています。しかし、物価はそれ以上に上がっており、4月の実質賃金は昨年同月比1・7%減となっています。「令和版所得倍増」(首相)どころの話ではありません。

 日本共産党はアベノミクスで膨らんだ内部留保の増加分に年2%、5年間で10兆円の時限的課税を行い、税収を最低賃金を時給1500円へ引き上げるための中小企業支援にあてるよう提案しています。賃上げとグリーン投資を行った分は課税を控除します。行き過ぎた大企業減税の不公正をただすとともに、賃上げと脱炭素を促し、最低賃金を大幅に引き上げる「一石三鳥」の政策です。他党の政策にはない実効性のある賃上げ策です。

 岸田首相は一連の党首討論で「内部留保課税は二重課税の問題もある」などと背を向けましたが、志位氏は「大企業への行き過ぎた減税の一部を返してもらうのは二重課税にあたらない。消費税こそ最悪の二重課税だ」と反論。首相が目指す最低賃金の「時給1000円以上」という低い目標にも、志位氏は「すでにイギリスもフランスも1500円を超え、ドイツは10月から1600円超に引き上げられる。アメリカのバイデン大統領は約2000円への引き上げを呼びかけている」と事実を示して大幅引き上げを求めました。

男女賃金格差の是正でジェンダー平等へ

 ジェンダー平等をめぐり、焦点の一つである男女賃金格差の是正も議論されました。

 男女の賃金格差の公表の義務付けにとどまらず、どう是正するかまで公表させないと、実効力はないという質問に岸田首相は、男女の賃金比率を公表することを義務化することで「女性の賃金が高いことが、企業の評価につながる雰囲気をつくる」と述べるにとどまりました。

 これに対し、日本共産党の志位委員長は、政府が公表を決めたことは前進と評価しつつ「是正計画を企業に作らせ、それを監督し奨励する国のシステムをつくることまでやっていかないと、実際進みません」として「これを求めたい」と主張。

 さらに、ケア労働者の賃上げがもう一つの大きな課題だとし、特に介護、保育分野で9000円にとどまっていると指摘。「1桁違う」という批判を紹介し、「全産業平均と比べて8万円少ない。平均並みにする賃上げが必要になってきます」と主張しました。

原発に頼らない脱炭素促進

 討論の中で、日本維新の会の松井一郎代表は、繰り返し電力料金値上げを口実に原発再稼働を主張し、岸田首相に「決断と実行」を迫りました。国民民主党の玉木雄一郎代表も「電気料金が高いので、安全基準を満たした原発はしっかり動かす」と岸田首相に求め、公明党も参院選公約で、再稼働について「立地自治体等の関係者の理解と協力を得て取り組む」と容認の姿勢です。

 21日の党首討論で、岸田首相は、さまざまなエネルギーをミックスするとし、「その一つの重要な要素が原発だ」と指摘。「安全性を重視しながら、しっかりと原発の再稼働を進めていく」と執念を見せました。

 志位委員長は「この機に乗じて再稼働行け行けというのは、絶対に反対だ」とぴしゃり。「原発をダラダラ動かすと、結局、再エネの本格普及にも力が入らない」と指摘し、原発の即時ゼロ、石炭火力からの撤退の決断を岸田首相に迫りました。


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