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2022年6月24日(金)

きょうの潮流

 架空の設定なのに気味が悪いほどリアリティーがあります。カンヌ国際映画祭で早川千絵監督が新人監督賞特別表彰を受賞した映画「PLAN75」です▼舞台は近未来の日本。国は少子高齢化社会の解決策として、75歳以上の後期高齢者に自ら生死を選べる制度〈プラン75〉を導入します。人に迷惑をかけたくないと粛々と受け入れる高齢者。倍賞千恵子さん演じる78歳のミチも、高齢を理由に職を失い、申請に追い込まれます▼国の事業で働く若者は優しく、高圧的でないかわりに罪悪感もありません。あくまで死ぬのは「自己決定」。そのお手伝いをしているにすぎないのですから。現代の“姥(うば)捨て山”は組織的でスマート。支度金として10万円を支給し、翻意しないようコールセンターの職員が定期的に電話を入れる念の入れようです▼早川監督は、弱者を自己責任論で攻撃する日本社会への憤りが映画化の動機と語ります。生産性のない人間は生きる価値はない、と有形無形の圧力をかける。〈プラン75〉は、いわばその最終形か▼岸田政権の下、映画を絵空事と笑えない現実が進行しています。物価高騰にもかかわらず年金は削減。75歳以上の医療費の窓口負担も、10月から2倍に引き上げられます。とりわけ高齢女性の貧困は深刻です。ミチの境遇にわが身を重ねる人は少なくないでしょう▼死ぬまで生きる。そこに意味などなくていい。人間の一生を支える政治であってほしい。映画は若い世代に希望を託します。今ならまだ引き返せます。


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