2022年6月20日(月)
参院選公示直前 党首討論 争点鮮明に
フジ系番組 志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は19日放送のフジテレビ番組「日曜報道 THE PRIME(ザ・プライム)」で行われた党首討論で、異常円安、物価高騰を招いている「異次元の金融緩和」政策や労働法制、賃上げ、安全保障政策について与野党党首と議論しました。
「異次元の金融緩和」
金融頼みでなく、実体経済を良くすることを最優先に据えた経済政策に転換を
冒頭、番組のキャスターが、急速な円安が進み、物価高など暮らしに影響がでていると指摘。「さらなる円安が進む可能性も指摘される中、大規模な金融緩和(『異次元の金融緩和』)を続けるべきかどうか」を各党に質問しました。
岸田文雄首相は「急速な円安によって物価に影響がでている」と認める一方で、「(金融政策は)現状においては変えるべきではない」と、アベノミクスの「異次元の金融緩和」の継続を表明しました。公明党の山口那津男代表は「金利を上げてしまうと大きな打撃になる」と金融緩和の継続を主張しました。これに対し志位氏は、「異次元の金融緩和」をやめ、「金融頼みでなく、実体経済を良くすることを最優先にした経済政策への転換」を訴え、消費税減税や賃上げなどの具体策を提案しました。
志位 共産党は最初から(「異次元の金融緩和」に)間違った政策だということで反対してきましたけども、ここにきて、異常円安、物価高騰を招いている。破綻してしまった。これ(「異次元の金融緩和」)をやめて、そして金融頼みではなくて、実体経済を良くすることを最優先に据えた経済政策に転換すべきです。
一番効果的なのは、消費税を5%に減税すること(です)。総理は「エネルギーと食料にターゲットをあてる(対策を行う)」とおっしゃいますけれど、それだったら、消費税の減税が一番効果的です。
それからもう一つは、政治の責任で賃金を上げることです。アベノミクスで膨らんだ大企業の内部留保に時限的な課税を行って、10兆円の税収をつくって、それで最低賃金1500円に引き上げるための中小企業支援に充てようという提案をしております。これをぜひやるべきです。
実体経済を良くする。そのためには減税と賃上げ、これにぜひ踏み切っていただきたい。
日本維新の会の松井一郎代表は「金融緩和をやめるべきではない」と主張。国民民主党の玉木雄一郎代表は「金融緩和は当面継続すべき」と述べ、れいわ新選組の山本太郎代表は「黒田日銀総裁は間違っていない」と、「異次元の金融緩和」を肯定しました。
競争力の低下
「使い捨て」労働をやめ、人間らしく働けるルールをつくってこそ、競争力が上がってくる
続いて番組では、スイスのシンクタンクの調査で、日本の競争力がかつての世界1位から34位まで落ち込んだことが指摘され、終身雇用制など労働法制の問題が議論になりました。
岸田首相は「選択の幅をもっと広げないとならない」と労働法制の規制緩和に固執する姿勢を示しました。松井氏は「(終身雇用制は)見直すべきだ」と主張。これに対して志位氏は、「使い捨て」労働をやめ、人間らしく働けるルールをつくることこそ重要だとして次のように述べました。
志位 (終身雇用制について)見直すべき点はあると思います。
ただ、労働法制の規制緩和で正社員を非正規に置き換えて、働く人を「使い捨て」にしてきた。これが、競争力の低下の一番の要因の一つだと思います。
国会で(日本の)電機産業の衰退問題を取り上げたことがあります。かつては世界の50%の半導体を作っていた。今は10%しか作れない。自前で半導体一つ作れない国になってしまった。どうしてそうなったのかと言いますと、リストラ、リストラで、とくに研究職、開発職、技術職をリストラ(の対象に)してしまった。そうすると、プライドが傷つけられて、海外に出ていってしまう。頭脳流出が進んで、競争力が衰退したわけです。
働く人を大事にしない、そういう経済政策では、競争力は絶対に引き上がりません。
私は、労働法制の規制緩和の路線を抜本的に転換して、非正規の方を正社員にしていく。そして、人間らしく働けるルールをつくる。人間を大事にしてこそ競争力が上がってくるということを強く言いたいと思います。
大軍拡
財源をどうするかを示すことなしに“白紙委任”というわけにいかない
番組では「安全保障」もテーマになりました。
原子力潜水艦の保有への賛否を質問されました。維新の松井氏は「ぜひやるべきだ」と述べ、国民の玉木氏は、保有に賛成を表明。岸田首相は保有について「年末にかけて議論します。今この段階で何か予断を持って申し上げることは控えなければならない」とあいまいな姿勢を示しつつ、「厳しい安全保障環境の中で防衛力はしっかり強化しなければならない」と軍拡を主張しました。志位氏は、原潜の保有はもとより大軍拡計画の全体について平和と国民生活の両面から厳しく批判を加えました。
志位 (原潜の保有には)反対です。今のロシアの蛮行に乗じて大軍拡の大合唱が起こっていますけれども、軍拡で平和が守れるか。日本が軍拡で構えたら、相手も軍拡を加速させます。「軍事対軍事」の悪循環に陥ってしまう。
それから、軍事費を2倍にするという議論もあります。自民党は公約で、「GDP(国内総生産)比2%」ということを言っています。そうしますと、5兆円の軍事費を増やすわけです。
財源どうするんですか。消費税でまかなおうとしたら、2%以上の増税になります。医療費にかぶせようとしたら、医療費の窓口負担を倍にしなきゃならない。現役世代で、今3割負担ですから、6割負担にしないとならない。これどうするんですか。暮らしを押しつぶすことになる。
ですから、この軍拡の議論、どういう規模でやるのか、財源をどうするのか、これをぜひ岸田さん、国民にはっきり示してほしい。それを示すことなしに、“白紙委任”で、あとは勝手にやりますよというわけにいかない。私たちは反対ですが、もしそれをやるというのだったら、きちんと審判あおぐべきだと思います。
岸田氏は、志位氏の提起に答えられず、「数字ありきではない」とのごまかしに終始しました。
賃上げ
大企業の内部留保課税で賃上げを促進――たまっているお金が、生きた経済に回り、好循環が始まる
最後に、賃上げの問題が議論になりました。山口氏は「あるべき賃金の水準を示した上で、この賃金上昇を導いていくべきだ」などと述べるにとどまりました。各党が抽象論にとどまるなかで志位氏は財源論も含めた具体的な提案を行いました。
志位 私たちは、大企業の内部留保に課税をして賃上げを促進するという提案をしております。
アベノミクスの8年間で、大企業の内部留保は130兆円も増えまして、466兆円まで積み上がっている。40兆円もの(法人税の)減税をやりすぎた結果です。ですから、その一部を返してもらう。具体的には2%の課税を5年間やって、10兆円の税収を得ようという提案をしております。
これを私は一石三鳥と言っているんですが、一つは大企業減税の不公平をただす。
二つ目に、賃上げとグリーン投資をやった場合には課税を控除して、賃上げと脱炭素が進むようにする。
そして三つ目に、税収10兆円は、最低賃金を1500円に引き上げるための中小企業支援に使います。
これをやることで、大企業の内部留保にたまっているお金が生きた経済に回りだして、経済の好循環が始まる。これをぜひやりたいというふうに提起しています。