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2022年6月11日(土)

主張

物価高での年金減

高齢者苦しめる政治をやめよ

 15日の年金支給日を前に4月、5月分以降の0・4%減額を知らせる「年金額改定通知書」が届き、「物価高なのに年金を減らすのか」と怒りの声が上がっています。食品も電気・水道も大幅に値上がりしているさなかの減額は高齢者の暮らしにとって大きな痛手です。年金削減を中止し、高齢者も現役世代も“頼れる年金”に改革しなければなりません。

失政の理不尽なツケ回し

 厚生労働省が示す標準的な例では、国民年金で年3108円、厚生年金(夫婦2人分)で年1万836円の減額となります。

 年金は高齢者の生活を支える“命の綱”です。政府の調査でも60歳以上の67%が「公的年金が主な収入源」(内閣府「高齢社会白書」)と答えています。しかし支給額は低く、就労を希望する理由で最も多いのは「収入がほしいから」です。もともと年金だけで生活できないのが実態です。

 今回の減額は、2~4年度前に賃金水準が下がったら、その分、年金を減らすという不当なルールを適用したためです。18~20年度の賃金変動はマイナスでした。

 その間の賃金の減少は安倍晋三政権の失政によるものです。非正規雇用を拡大した上、最低賃金の抜本的引き上げなど政治の責任を果たしませんでした。そのツケが物価高の今、年金受給者に押し付けられています。

 ドイツでは昨年の賃上げを反映させ、旧東独部で6・12%、旧西独部で5・35%、7月から年金を増額します。日本と対照的です。

 年金は地域経済を支える重要な柱でもあります。厚労省が、家計全体の消費支出(家計最終消費支出)に対する年金支給総額の割合を都道府県ごとに集計したところ、20%超が13県、10%超が46道府県でした。同省も、年金は「地域経済における安定した消費活動の下支え」(17年版「厚生労働白書」)と認めています。

 年金の削減は消費を冷え込ませます。現役として働いている人たちの賃金に影響を及ぼし、さらに年金の給付額を引き下げる悪循環を生むことになります。

 岸田首相は現行の仕組みを「持続可能な制度」と正当化しています。しかし減り続ける年金に現役世代の多くが不信を抱いています。国民が払う保険料が柱となっている年金制度の基盤を崩しかねません。

 “減る年金”を抜本的に改める必要があります。高額所得者が優遇される保険料を見直す、巨額の年金積立金を給付に活用する、現役世代の賃上げと正社員化を進める―などの改革が求められます。

医療費の負担増も中止を

 高齢者は医療費や介護をめぐる負担増にも苦しめられています。75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料は4月から多くの県で引き上げられ、全国平均で過去最高になりました。

 10月に実施される後期高齢者の医療費窓口負担の2倍化も深刻な問題です。所得が一定額を超える370万人が影響を受けます。日本共産党は2倍化中止法案を参議院に提出しました。

 高齢者に冷たい政治では若者も現役世代も未来に希望を持てません。物価高騰の中で高齢者に新たな苦難をもたらし、社会保障制度への国民の信頼を失わせる政治を転換することが急がれます。


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