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2022年6月8日(水)

主張

岸田政権の「骨太」

財政方針で軍拡の旗振る異常

 岸田文雄政権が2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定しました。ロシアのウクライナ侵略や米中対立に乗じてかつてない大軍拡を求めた危険な内容です。財源も示さず、まず軍事費増額ありきの異常な財政方針となっています。

自民党の要求を丸のみ

 「骨太の方針」は、経済財政の司令塔とされる経済財政諮問会議(議長・岸田首相)が毎年、基本方針を示し、政府が予算編成の指針とする文書です。例年、安全保障や外交についても述べていますが、今年は原案を不十分とする自民党の要求で書き換えられ、軍拡が大幅に強調されました。

 ロシアの侵略や、中国を念頭に置いたインド太平洋地域の「環境変化」、台湾問題を挙げ、岸田内閣として初めて「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」ことを盛り込みました。

 北大西洋条約機構(NATO)諸国が「国防予算を対GDP(国内総生産)比2%以上とする基準を満たすという誓約」をしていることも明記し、5月の自民党の大軍拡提言を取り込みました。

 日本で軍事費をGDP比2%に倍増するには約6兆円、消費税の税収にして税率約3%分の財源が必要です。これほど巨額の財政支出をするのであれば、当然財源を明らかにすべきですが、何も書いてありません。あまりに無責任な姿勢です。

 ドイツが憲法にあたる基本法を改正し「新規借り入れ」によって基金を設け軍事費を賄うことを定めたと脚注が加えられました。国債(国の借金)で軍拡の財源を確保すると主張しているのは安倍晋三元首相です。軍事費調達を目的とした国債発行は法律で認められていません。政府の財政指針が言及することは許されません。

 経済・財政全体については「今後とも、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める」「2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現する」―とアベノミクス(安倍政権の経済政策)を全面的に継承しました。

 9年間のアベノミクスで経済成長が止まってしまったことへの言及は皆無です。政府の文書ですら、賃金が上がらず「低成長」(内閣府の22年版「ミニ経済白書」)に陥ったと認めているのに、まったく無視しています。

 すでに2%を超える物価上昇で多くの国民が苦しんでいるのに、これを「安定的」に続けたのではたまったものではありません。

 岸田首相が主張していた「分配」はほとんど姿を消しました。

暮らし守る経済政策こそ

 最低賃金の引き上げについては全国平均1000円以上のきわめて低い目標です。それすら実現時期の目標を示しません。社会保障では「高齢者中心」の給付をただすとして、削減路線を引き継ぎます。

 「税制改革」で「応能負担」に一言だけ触れましたが中身は何もなく、首相が自民党総裁選で公約した「金融所得課税の強化」は影も形もありません。

 国民の暮らしも日本の平和と安全も危うくする「骨太」の実行は許されません。コロナ危機や物価高で苦しむ国民を支える経済財政政策に転換することこそ今緊急に必要です。


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