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2022年6月5日(日)

主張

「新しい資本主義」

「成長しない国」の継続なのか

 岸田文雄政権が「新しい資本主義」の実行計画案をまとめ、近く正式決定します。

 「新しい資本主義」は、2021年9月の自民党総裁選で岸田氏が、国民の批判を浴びていた安倍晋三・菅義偉政権との姿勢の違いを見せようと掲げたものです。当時から「アベノミクスの焼き直し」との指摘は絶えませんでした。

 今回示された同計画案には、売り物にしていた国民への「分配重視」は見る影もなく、「アベノミクス追随」(「産経」1日付)などの指摘が相次いでいます。いくら新しさを装っても、政策の行き詰まりはごまかせません。

トリクルダウンに固執

 計画案は「新しい資本主義においても徹底して成長を追求していく」とうたい、「経済財政運営の枠組みについては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢の枠組みを堅持する」と明記しました。アベノミクスをそのまま踏襲することの宣言です。これまでの大企業や金持ち優遇政策についての反省はありません。

 分配については「待っていても、トリクルダウンは起きない」と述べ、大企業のもうけが大きくなれば、いつか労働者にしたたり落ちてくるという「トリクルダウン」理論に固執し、さらに推進する立場を表明しました。

 アベノミクスのもとで大企業がためこんでいる内部留保は、12年度の333・5兆円から20年度の466・8兆円に133・3兆円も増えました。

 労働者の実質賃金(年額)は、1996年から2021年までに61万円マイナスになってしまいました。労働者派遣法などの労働法制の規制緩和やリストラの横行に加えて、ギグワークやフリーランスなど「雇用によらない」不安定な働き方の増加が背景です。

 トリクルダウンの誤りは明白です。大企業・金持ち優遇の「成長戦略」で、日本が成長できなかったことは、9年間のアベノミクスで証明されています。

 日本の01年から22年の名目国内総生産(GDP)の平均伸び率は、アメリカの3・65%、欧州連合(EU)の2・59%にたいして、わずか0・06%です。賃下げによって国内需要が低下して商品が売れなくなっているからです。

 岸田首相がたびたび力説していた「所得倍増」の言葉も無くしてしまいました。代わりに登場したのが、「資産所得倍増」です。「貯蓄から投資へ」という国民の資産を金融に投資させようというスローガンも復活しました。金融所得税率が低いため、所得1億円以上の人の課税率が低くなる「1億円の壁」にも、首相になってからは口を閉ざしたままです。

格差拡大は許されない

 計画案には、「経済的格差の拡大」も弊害として言及されていますが、金融所得が増大すれば、所得格差は大幅に拡大するばかりです。最低賃金にも言及していますが、引き上げ額については、最低賃金審議会で議論するとのべるにとどまっています。

 賃金が上がらず、成長しない国になってしまった日本を、内部留保課税と最低賃金の1500円への引き上げ、消費税の5%への引き下げ、男女賃金格差の解消などで「やさしく強い経済」の国に変えることが求められます。


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