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2022年5月26日(木)

主張

「敵基地攻撃」

米国の戦争で発動の危険明白

 岸田文雄首相は23日の日米首脳会談で、相手国のミサイル発射拠点などを破壊する「敵基地攻撃」能力の保有についてバイデン大統領に検討を約束しました。岸田政権は、安保法制に基づく集団的自衛権行使の際にも敵基地攻撃が可能とする見解を示しています。日本が攻撃されていないのに、米軍が戦争を始めれば、その相手国を自衛隊が攻撃できるというものです。バイデン氏は会談後の記者会見で、台湾有事に米国が軍事的に関与する意思を明らかにしました。こうした事態で日本が敵基地攻撃を発動する―。日本が直面する現実の危険はここにあります。

日本に戦火を呼び込む

 敵基地攻撃をめぐり、歴代政府は▽日本に対しミサイル攻撃が行われ、それを防ぐのに他に手段がない場合に限り、相手国のミサイル基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である▽しかし、平素から相手国に脅威を与えるような攻撃的兵器を保有することは憲法の趣旨ではない―と国会で答弁してきました。

 敵基地攻撃能力の保有は、こうした従来の憲法解釈を百八十度転換するものです。文字通り相手国に脅威を与え、緊張と軍拡競争の悪循環を激化させます。

 敵基地攻撃をめぐる政府の答弁は、日本へのミサイル攻撃に対する個別的自衛権の行使であることが前提でした。ところが、2014年に安倍晋三政権が強行した集団的自衛権行使容認の閣議決定とそれに基づく翌15年の安保法制の成立で、その意味は根底から変質します。敵基地攻撃が集団的自衛権の行使としても可能とされることになりました。

 14年の閣議決定は、日本と密接な関係にある他国に対し攻撃が発生し、そのことにより日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合(存立危機事態)も、日本がそれを排除するため武力を行使できるとし、集団的自衛権の行使を認めました。政府は、安保法制の国会審議で、敵基地攻撃に関する従来の考え方は、存立危機事態での集団的自衛権の行使にもそのまま当てはまるとしました。岸田政権もこの見解を踏襲しています。

 それは、米国が第三国と戦争を起こし、政府が存立危機事態と認定すれば、米国へのミサイル攻撃を防ぐため日本が相手国のミサイル基地をたたくことが法理的には可能ということです。相手国からすれば日本による先制攻撃であり、反撃されるのは必至です。

 ただ、この時の審議では、日本は敵基地攻撃のための装備体系を保有しておらず、個別的自衛権の行使としても敵基地攻撃を行うことは想定していない、ましてや日本への攻撃が発生していない中で集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことはそもそも想定していないと答弁していました。

憲法9条と相いれない

 岸田政権は今まさに、敵基地攻撃を目的にした装備体系の保有に乗り出そうとしています。そうなれば、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことも当然想定することになります。

 安倍元首相は、台湾有事が存立危機事態になる可能性を公言しています。その際、米国の軍事介入を支援するため日本が敵基地攻撃をする危険も生まれます。憲法9条と決して相いれない道に日本を引き込むわけにはいきません。


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