2022年5月26日(木)
「AV出演被害防止・救済法案」の採決にあたって
党ジェンダー平等委員会責任者 倉林明子
日本共産党ジェンダー平等委員会責任者の倉林明子参院議員は25日、「AV出演被害防止・救済法案」の採決にあたって次の談話を発表しました。
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一、アダルトビデオ(AV)出演による被害の防止と救済を目的とした、「AV出演被害防止・救済法案」が25日の衆院内閣委員会で全会一致で可決されました。日本共産党は、実際の性交を禁止する項目を入れるなど、より抜本的なAV被害防止に向けて、強く主張しつつ、現に生じているAV被害の救済を図るために法案に賛成しました。
二、AVへの出演は出演者の心身に深刻な被害をもたらします。しかし、AV出演を直接対象とした法規制はありません。そのもとで、4月からの成年年齢引き下げに伴い、18、19歳が親の同意なく結んだ契約を取り消すことができる「未成年者取り消し権」が行使できなくなりました。このため18、19歳を含めた出演被害の拡大が懸念され、その対策が今国会で大きな問題となってきました。こうしたなか、超党派の議員でAV被害の防止と救済のための法整備について議論が行われてきました。
三、法案は、契約段階で事業者に書面による契約と説明の義務を課しています。契約・説明から1カ月を経なければ撮影はできず、撮影終了から公表まで4カ月をあけ、その間に出演者に映像を確認する機会を設けなければならないことも規定しています。これらに違反した場合、契約の取り消しや解除が可能とされます。
また、契約に違法がなくても無条件で契約を解除できる規定も盛り込みました。解除できる期間は公表後1年とし、経過措置として法施行後2年間は解除できる期間を2年としています。
事業者は映像の回収を含めた原状回復義務を負い、出演者は公表の差し止め請求ができるとしています。規定に違反した事業者に対する罰則規定も定められています。
これらの規定は、被害防止と被害の救済にとってこれまでにない重要なものです。
四、法案は、AVを「性行為映像制作物」とし、性交など「性行為に係る人の姿態」を撮影した記録などと定義しています。日本共産党は、超党派の実務者会合や法案審議で、実際の性交を禁止する項目を入れることや文言の修正などを求めてきました。被害者の支援団体などからは、実際の性交を伴う契約を合法化するものではないかとの懸念が示されました。こうした声を受け、与党が当初示した骨子案から修正が重ねられましたが、まだ課題を残しています。
同時に、法案策定の経過を通じて、党派を超えてさらなる対策の必要性を共通認識とするに至ったことは重要です。法案の付則は、「契約を無効とする条項の範囲」について施行後2年以内に検討を加え、必要な措置を講じるとしています。これは、特に性交を含む契約は禁止するべきだという声を受けて盛り込まれたものです。法案審議で法案提出者は「有償性交の条項の有効性」も検討すると答弁しました。性交を含む契約を禁止する方向での世論と運動を広げ、さらなる見直しの議論につなげていくために力をつくします。
法案は、民法で無効とされる公序良俗違反の契約や、刑法や売春防止法に違反するような行為を行えるようにするものではないとしています。現行法で違法なことを合法化しないことは当然です。AV出演契約は、売春防止法が禁止する「売春」に当たるものや、労働者派遣法や職業安定法で「有害業務」とされる形態のことも多く、こうした罰則に基づく取り締まりを強化し、違法なAV撮影をなくしていく対策を求めていきます。
五、「アイドルになれるとスカウトされ、行ってみるとAV撮影だった」「生活に困窮しAV出演で収入を得なければならなかった」など、被害の実態はさまざまです。法案に定める契約の規制や救済の手段を広く周知・啓発するとともに、法案に盛り込まれた相談体制の整備を運動とも連携して進め、AV出演による被害を少しでも減らすことが緊急の課題です。
同時に、対価を払って実際に性交させることは個人の尊厳を傷つけるものであり、こうしたAV撮影は禁止されるべきです。実際の性交を伴うAVについて正面から規制する法整備を進めることが緊急に求められます。
AV被害の当事者や支援団体などが告発してきた実態や声を踏まえ、あらゆる性的搾取をなくすため、引き続き力をつくします。