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2022年5月17日(火)

気候危機打開へ CO2 Zero

福井県医療生協 省エネに着手

CO2を44%削減

設備導入、ガス電気料金半減

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が4月に公表した第6次報告書が指摘しているように、破滅的な気候変動を回避するために取り組める時間は長くありません。気候変動を打開するための「日本共産党の2030戦略」は、そのカギがエネルギー消費を減らす省エネと再生可能エネルギーにあると提案しています。省エネにいち早く着手し、二酸化炭素(CO2)排出量を半分近く減らした診療所があります。(小梶花恵)


グラフ

 福井県医療生活協同組合の光陽生協クリニック(福井市)は2017年、老朽化した空調機や給湯器、照明を省エネタイプの機種に入れ替えました。その結果、18年の排出CO2を81・4トン削減し、15年の185・2トンと比べて56%になりました。

補助制度使って

 同クリニックは、15年ほど前に設置され、耐用年数が経過した冷暖房や給湯設備を使い続けていました。入れ替えに当たり、省エネ診断を行ったコンサルタント会社「サンワコン」主任の駒野裕一さんは「古くなれば冷暖房能力が落ちる。各部屋のリモコンで温度管理をすることでさらに電気代がかかっていた」といいます。給湯システムは1カ所で沸かした湯を配管で全館に送る間に冷めて無駄が多いことも分かりました。

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(写真)駒野裕一さん

 駒野さんは「湯が出る洗面台には電気式の小型給湯器を個々に取り付け、冷暖房機は最新にし、換気時に冷暖房した温度を外に逃がさないよう熱交換機を設置。照明は蛍光灯からLEDに替えることでガス・電気の消費を減らせる」と提案。消費する電力の低炭素化を図るため、太陽光発電パネル(発電容量16キロワット)も設置しました。事業費に対する3分の1の政府補助が得られるため実費負担を大幅に低減。さらに、過大だった冷暖房機の能力をダウンサイジング(小型化)することで事業費を圧縮しました。

 診断の数年前、故障が増えたために業者に依頼した設備入れ替えの見積額は1億円を超えていました。統括事務長の田嶋清孝さん(41)は「価格に驚いて更新する踏ん切りがつかなかった。省エネ設備なら補助を使えば半額ででき、理事会の受け止めは好意的だった」と振り返ります。

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(写真)屋上最上部に設置した太陽光パネル。「空きスペースに増設したい」と話す田嶋さん

節電意識も変化

 17年の省エネ設備導入後、隣接する光陽生協病院でも19年に省エネ設備を導入。節電にも取り組みました。以前はカルテ庫で消し忘れた暖房が暖かい季節についたままだったことも。消し忘れ確認の点検は職員の負担が大きいこともあり、冷暖房を1カ所の集中管理にしました。温度設定を変えずに扇風機で冷気を回し、それまで苦情があった暑さを改善しました。

 照明も人感式に変えて間引き。風呂用の大型給湯器はガス式から電気式ヒートポンプ機器に更新し、昼間のたき増しをするタイミングをタンクの残量50%から30%まで下げるなど工夫し、18年のクリニックのガス・電気料金を入れ替え前の半分近くまで削減。病院は19年に入れ替え前の4割近くを削減しました。「経営的にもCO2削減の点でもやってよかった」と田嶋さん。意識が変わり、自宅で節電するようになった職員もいるといいます。将来は太陽光パネルを増設して蓄電池にため、全電力を自足して災害時の診療もできるよう検討しています。

 経費削減になるにもかかわらず、国内の省エネ機器の導入は進んでいません。「補助制度が知られていないことが理由。補助申請のための書類準備が設計や施工業者の負担になるということもある」と駒野さんは指摘します。

 導入した冷暖房機のほとんどは、CO2削減効果の補助要件等を考慮してガス式を採用しました。将来的に事業所で消費するエネルギーを全て自足し、排出ゼロにするには電気式への転換も必要となることから、今後は導入コストや申請要件の緩和が課題です。


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