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2022年4月13日(水)

主張

EUデジタル法案

IT大企業規制の重要な動き

 圧倒的な市場支配力を持つ巨大IT(情報技術)企業に経済のルールをどう守らせるかが各国で問われています。欧州連合(EU)はデジタル市場法案を制定し、罰則を伴う包括的な法規制に踏み出します。デジタル社会で公正な競争を確保し、中小企業や消費者の権利を保障するうえで重要な動きです。

禁止事項定め罰則強める

 EUの行政機関、欧州委員会は2020年12月、デジタル市場法案とデジタルサービス法案をまとめ、立法の権限を持つ欧州議会と理事会(加盟国政府の代表らで構成)が審議していました。このうちデジタル市場法案が3月24日、両機関で基本合意されました。今後、正式な採択を経て23年に施行される見通しです。

 法案は、インターネットで幅広い事業の基盤(プラットフォーム)を提供する企業を「ゲートキーパー」(門番)と呼び、経済や社会に基本的なシステムを提供する役割を重視しています。SNSやアプリストア、検索エンジンを運営し、時価総額が750億ユーロ(約10兆円)以上などの要件を満たす企業が対象です。グーグル、アマゾンをはじめとする巨大IT企業が想定されています。

 プラットフォームの開発には膨大な費用と時間がかかるため、事業者は既存のプラットフォームを使って通信販売や広告などの事業を営まざるをえません。

 このため巨大IT企業が優越的地位を使ってユーザー企業に不公平な取引条件を押し付けたり、他社製品を排除したりすることが横行しています。グーグルが自社の検索エンジンをスマートフォンに標準搭載させていることも各国で問題にされています。

 デジタル市場法案は巨大IT企業が独占的地位を利用して自社を優遇する行為を規制します。スマホに自社アプリの事前搭載を義務づけ、ユーザーのアンインストールを妨げることは禁止されます。スマホ上のアプリ配信や決済サービスから他社を締め出すことも禁じられます。他社の合併・買収(M&A)については欧州委員会に届け出を義務づけます。

 巨大IT企業に対して各国はこれまでその都度、独占禁止法や競争法で対応してきました。しかし従来の法制度では不十分とされ、罰則の強化を求める声も上がっていました。

 同法案は禁止や規制の対象となる行為を包括的に示し、欧州委員会に監督権限を持たせます。違反企業に対する罰金を世界売上高の最大10%と高額なものにします。

 もう一つのデジタルサービス法案はネット上でのヘイトスピーチ、児童ポルノなど違法なコンテンツを禁止し、事業者の責任を明確にします。

 EUは今後二つの法律を成立させることで、デジタル事業の規範の確立をめざします。

事業者任せでは進まない

 日本ではデジタルプラットフォーム透明化・公正化法が21年に施行されました。インターネット通販で出店者に不利益を押し付ける行為が横行したことなどを受け、規制に踏み出した法律です。ただし基本は事業者の自主規制です。

 デジタル社会においてプラットフォームはいまやインフラとも言える役割を果たしています。企業まかせにせず、法的規制を強めるべきです。


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