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2022年2月11日(金)

シリーズ 維新の会 その実像は

政治路線・国会論戦にみる

自公の悪政 右からけん引

 昨年の総選挙で議席を増やした日本維新の会が注目を集めています。コロナ対応で毎日のようにテレビに映る吉村洋文大阪府知事(同党副代表)に期待する人も少なくありません。しかし、実態はどうなのでしょうか。まずは政治路線から同党の実態を検証します。

解雇自由化・病床削減…

弱肉強食の新自由主義推進

 「維新の政策『維新八策2021』を改めて確認してみましたが、弱肉強食を旨とする極めて野蛮な新自由主義路線と言わざるを得ません」。大阪府吹田市に住む神戸大学名誉教授の二宮厚美さんは言います。

雇用の流動化

 典型が「雇用の流動化」=労働法制の規制緩和路線です。二宮さんは「この路線は非正規雇用の拡大など雇用の劣化と格差を広げた原因そのものです。しかし、維新はそれをさらに進めて従来の自民党政権の改悪でも実現できなかった『解雇紛争の金銭解決』、つまり、不当でも金さえ払えば解雇できる首切り解雇の自由化まで公約に盛り込んでいます」と指摘します。

 今国会でも藤田文武幹事長が「どの党も労働市場改革を全く言わなくなった」と改悪の停滞を問題視。「(労働者)派遣法改正で悪い影響ばかり出ているというのは明らかに間違いだ」と述べ、解雇規制の緩和などを求めています。(1月25日、衆院予算委)

医療を破壊

 社会保障をめぐる政策では、自腹で受ける医療を増やして皆保険体制を崩す「混合診療の解禁」を明記。

 ほかにも、毎月全国民への一律給付を行う「ベーシックインカム」制度の導入検討を掲げていますが、これは基礎年金や生活保護、児童手当などの解体と一体になっている「とんでもない代物です」(二宮さん)。

 国会でも大阪で医療・保健行政を切り捨てコロナ対応を困難にしたことは棚に上げ、「いまの重症病床の逼迫(ひっぱく)は感染症法にこだわっているがゆえに生まれた人災だ」(2月2日同委、足立康史衆院議員)などと主張。昨年は病床削減推進法と高齢者医療費2倍化法に賛成し、コロナ禍の中でもさらに医療を破壊する悪法の成立に手を貸しました。

もうけ優先の規制改革

 コロナ禍で、新自由主義の破綻が明らかになり、岸田文雄首相ですら「弊害」にふれざるをえなくなっているのに、維新は「総理は、新自由主義的な政策の是正を掲げ、改革に後ろ向きのように見える」(浅田均参院議員、1月21日本会議)と新自由主義政策の実行を迫り、まるで経営者団体のように「規制改革・構造改革に本腰を」(馬場伸幸共同代表、1月20日の衆院本会議)と主張しています。「成長戦略」として、米ウーバーのような危険な有償ライドシェアサービス(「白タク」)の解禁、企業の農地所有の解禁など規制緩和を要求。脱炭素社会を口実に小型原発の開発を迫っています。

 個人情報の保護より利活用を優先する財界と国が主導するデジタル化には、「デジタル分野の与党との自負で政府の背中を押してまいりたい」(馬場氏、同)と表明。「全預貯金口座とマイナンバーのひもづけ義務化」を求める一方で、行政が保有するデータは「特段の理由がない限りオープンデータとする」(同党政策)と企業のもうけに使わせようとしています。

何でも民営化

 東京進出を狙った昨年の都議選では、都営地下鉄民営化に加え「都営住宅は全て民間売却又は民間委託」と打ち出し、大阪でも進めてきた「何でも民営化」路線をあらわにしています。

 二宮さんは言います。

 「こうした政策や行動を維新は選挙でほとんど語ってもいないし、とりあげられてもいません。ただただ吉村氏のコロナ対応パフォーマンスと『改革』のポーズで人気を集めてきたのです。広く国民に実態を伝えることが非常に重要です」

軍拡・改憲・歴史修正主義…

戦争する国づくりをあおる

 「戦争する国」づくりの問題をめぐっては、自公政権以上に“右翼的立場”から悪政をけん引する役割を果たしています。

敵基地攻撃

 特徴としてあらわれているのが軍拡です。維新は、基本政策に「領域内阻止能力(敵基地攻撃能力)の構築について、積極的な検討を進める」と明記。加えて、「防衛費のGDP(国内総生産)1%枠を撤廃し、テロやサイバー・宇宙空間への防衛体制をさらに強化する」と主張するなど際限ない軍拡路線をむき出しにしています。

 馬場氏は、国会やテレビ番組でも「もはや台湾有事は『いつ起きるか』という次元」(1月20日の衆院本会議)と危機感をあおり、「抑止力として反撃する能力をもつことは絶対に必要だ」(1月9日のNHK「日曜討論」)と公言。「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の危機に直結する」などと安倍晋三元首相と同様のフレーズを振りかざしながら、相手を殲滅(せんめつ)する全面戦争に道を開こうとしています。

 五十嵐仁法政大学名誉教授は、「維新は『現状打破』『改革姿勢』をアピールすることで補完勢力としての本質を隠しています。その危険性は、翼賛体制を引っ張り、誤った方向へ世論を誘導していく『けん引役』です」と指摘。「北朝鮮のミサイル実験や米朝対立を背景にした台湾有事の危険性などが指摘される中で、国民に安全保障への不安が広がっています。維新はこうした不安に乗ずる形でさらに危機感をあおり、戦争へ結びつく危険な道に国民を誘導しています」と強調しました。

憲法審要求

 憲法審査会をめぐっては、自民党中心の「与党側」の幹事懇談会に維新も参加し、憲法審の毎週開催を主張しています。衆院本会議の代表質問では、「自民党が素案として示している緊急事態条項創設や9条改正についても、党内議論を進める」と発言。「安倍元総理が在任中、2020年までの施行という期限を示して国民的な憲法議論を促したように…」と言いながら、岸田首相に対し、「(改憲の)具体的スケジュールを明示し、憲法審での精力的な議論をリードしていくべきだ」(馬場氏、1月20日)と迫りました。ここでも安倍氏と同様の主張で早期改憲をあおっています。

 五十嵐氏は、「軍拡と連動した改憲を狙う『右側』からの支持を引き付けているのが維新です」と語ります。

 2日の衆院予算委員会では、山本剛正議員が日教組の教育研究集会での憲法教育にかかわるリポートを取り上げ、「意図的に子どもたちに護憲を浸透させようと各地で授業を進めている」と名指しで攻撃。「総理はご自身の任期中に憲法改正の実現を目指しているが、間違った教育が(によって)、憲法を国民の手に取り戻すことができない、遠ざかってしまっているという認識はあるか」などと迫り、改憲という政治的意図をもって、教育内容に不当な圧力を加える異常な姿をあらわにしました。

歴史を偽る

 歴史問題でも保守系団体の主張を代弁するかのような姿勢です。「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産の推薦をめぐり、松井一郎代表は「夕刊フジ」の連載(3日)の中で、「一時は『推薦見送り方針を検討』と報じられたが、地元や自民党保守派の反発を受けて、岸田首相が『聞く力』を発揮した。これは当然のことだ」と発言。戦時に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われていたことは、自治体の公的な歴史文書にも記されている歴史的事実にもかかわらず、松井氏は「『強制労働』とはいえない」と主張し、保守系団体と同じように政権をつきあげています。

 維新はこれまでも「慰安婦」問題への旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野談話」を「虚構まみれの作文だ」(馬場氏、2021年12月9日、衆院本会議)などと否定し、被害者を侮辱する歴史修正主義発言を繰り返しています。

 五十嵐氏は、「自民党でも言わないような極端な発言を平気でできるのが維新です。そうした本質を丁寧に明らかにすることが必要です」と強調。「一方で、野党は、国民の不満や不安の原因を根本的に解決するための正しい出口を示すことが求められます」と語りました。

同一戸籍・同一氏 女性蔑視…

ジェンダー平等の実現に背

 維新はジェンダー平等の実現にも背を向けています。政策提言「維新八策2021」で男女共同参画(ジェンダー・イクオリティ)の項目を設け、その中で「選択的夫婦別姓」の創設を主張しました。ところが、その中身は「同一戸籍・同一氏の原則を維持」し、「旧姓使用にも一般的な法的効力を与える」ものとしています。

 「同一戸籍・同一氏の原則を維持」するということは、結婚したら夫婦は同じ姓を名乗らなければならないという“強制的夫婦同姓”の現状は変えないということです。旧姓使用に「法的効力」を与えて利便性を一定高めたとしても、どちらかが生来の姓を失うという、個人の尊厳への侵害は避けられず、「同姓か、別姓かを選べるようにしてほしい」という願いに反しています。

 同党の足立康史幹事長代理(当時)は昨年10月14日、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める院内集会で、「100%の別氏(別姓)は当分できない」と冷たく言い放ちました。この発言に対し、集会参加者からは「すでに通称使用しており、通称使用の拡大で事足りるものではない」などの批判が相次ぎました。

 これまでにも維新は、党ぐるみで女性蔑視をくり返してきました。維新創設者の橋下徹氏は大阪市長当時の13年、「従軍慰安婦が必要だったのは誰だって分かる」と発言しましたが、維新は訂正も撤回もしていません。19年には「あいちトリエンナーレ」をめぐり、松井一郎代表が「慰安婦の問題というのは完全なデマ」と暴言を吐きました。17年衆院選で「8割の女はハエ」「女は頭がおかしくないと出産しない」などと述べた人物を候補に擁立したこともあります。

 維新の内部からも不満がもれています。同党の石井苗子議員は2日、参院内での超党派の女性議員による「クオータ制実現に向けての勉強会」で、党内の実情について「女性の意見を聞いたりしない。全部男が決める」「(総選挙で)41人当選したが、女性は4人しかいない」などと述べました。

維新の会が果たした政治的役割 自民党政治を補完・補強

神戸大名誉教授 二宮さんが指摘

 維新は日本の政治の中でどんな役割を果たしてきたのでしょうか。

 神戸大名誉教授の二宮厚美さんは「一番は自民党政治を右から補完・補強する役割だ」と言います。

 創設者の橋下徹氏が政治家になった2008年は、前年に第1次安倍政権が倒れ自民党の支配が全国でも大阪でも終わろうとしていた時代です。そのときに自民党府連の推薦をえながら、派手なパフォーマンスで府知事に当選し、その後の民主党政権期にも、教育改悪などで自民党の悪政の先行実験を行いながら安倍氏と結びつき、2度目の安倍政権につなげる準備をしたのが橋下氏だったと振り返ります。そして第2次安倍政権で、維新は国会でも「共謀罪」法など違憲立法に次々賛成、賭博場であるカジノの推進法を共同提出するなど「文字通り安倍自民党政治の伴走者、補完勢力、先兵としての役割を果たしてきた」と言います。

 「この間も安倍・菅政権がコロナ対応などの失政で支持を失い自民党政権が危機に陥る中で有力な対抗勢力となりつつあった野党共闘を攻撃する先兵となり、同時に反自民ポーズで行き場のなくなった票の受け皿になることで逆に自民党政治の補修をはかる役割を果たしてきました。むしろ悪政をあおり、ひっぱっている本質が明らかになれば少なくない支持者は離れるのではないでしょうか」


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