しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年1月26日(水)

無料PCRセンター 出ない「発生届」

陽性“放置”

病院行けず行政支援なく

 新型コロナウイルスに感染する不安を感じる住民などに、無料でPCRや抗原検査を実施する自治体が増えています。感染急拡大の中、無料検査で陽性と判定されたものの、医療機関の逼迫(ひっぱく)で診察してもらえる病院やクリニックが見つからない事態が相次いでいます。(遠藤寿人)


 神奈川県内の病院で感染症対応に追われている看護師のAさん。「行政が無料PCRセンターを設置し、薬局で検査キットも出回っています。しかし、政府や厚生労働省は陽性者への対応をどうするのかを全く考えていない」と憤ります。

現場は限界

 Aさんは「通常の救急外来をしながら同時に、系列病院と連携して、1日に30人を受け入れるのが限度。なんとか割り振っています」と病院側の苦しい現状を話します。「どうしても、症状がある人を優先せざるを得ませんし、それすらさばききれません。検査で陽性になったとしても無症状の人まで診るのは申し訳ないけれど無理です。日々、余裕がなく目いっぱいの状態」。感染者対策のベッド9床も埋まっています。

 神奈川県の場合、無料検査の結果が陽性だったときは「改めて医療機関を受診してください」としています。

 問題は、陽性者が医療機関を受診しないと、診断した医師が書く「新型コロナウイルス感染症発生届」を出してもらえないことです。「発生届」は、無料検査をしているPCRセンターや薬局では出すことができません。

 医療機関への受診で陽性が確認された場合は、「発生届」が最寄りの保健所に提出されます。保健所は、感染者へ電話で連絡。症状や濃厚接触者などの聞き取り調査が始まります。

国は対応を

 Aさんは、無料PCR検査の判定が陽性でも医療機関に診てもらえず「発生届」を出してもらえない、「発生届『難民』」が生まれていると指摘します。陽性で仕事にも行けない、療養施設にも入れない…。医療機関にかかれない陽性者がずっと行政から支援を受けられず、取り残されたままの事態になっているといいます。

 Aさんは正式な「発生届」ではなくても、「陽性と判明した患者リスト」を保健所に提出できるようなシステムをつくり、保健所もリストの対応職員を増やすなどの対策が緊急に求められていると要望します。「病院の対応にも限界があります。政府・厚労省は対応をしっかり考えてほしい」といいます。


pageup