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2021年12月30日(木)

主張

日本の死刑制度

廃止に向けた議論をおこす時

 岸田文雄内閣のもとで初めて死刑が執行されました。2019年12月以降、2年間執行されていなかったことから、執行停止を求める声が人権団体や弁護士団体などから上がっていました。死刑執行は、世界的な死刑廃止の流れに逆行しています。今回執行された3人には再審請求中の死刑囚も含まれており、その点でも強く批判されなければなりません。

世界の潮流に完全に逆行

 今年は、国連死刑廃止条約が発効して30年です。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによれば、執行の長期停止を含めて事実上の死刑廃止国は144カ国にのぼり、国連加盟国の7割以上を占めます。経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国中で死刑制度が存在しているのは、日本、韓国、米国のみです。

 韓国は1997年を最後に死刑を執行していません。連邦国家の米国では、23州で死刑を廃止しています。昨年、トランプ政権(当時)が連邦政府として17年ぶりに死刑を執行したことが厳しく批判されました。バイデン政権は政権公約に死刑廃止を掲げ、今年7月には連邦レベルでの執行停止を指示しています。主要国で死刑を執行しているのは日本だけです。

 死刑は、いったん執行されてしまえば、あとで誤判や冤罪(えんざい)が判明しても取り返しがつきません。実際、戦後相次いだ四つの死刑確定事件について、1980年代になって4人ともに再審無罪判決が確定しています。今後も誤判の可能性を常にはらんでいます。

 刑罰制度は、社会や文化の向上・発展とともに変化し、残虐な刑罰は廃止されてきた歴史があります。死刑は、国家が人命を奪う究極の刑罰であり、更生の道を断ち切ります。世界で死刑廃止が潮流となっている今、日本でも早期に廃止を実現することが求められています。

 「死刑になりたかった」と殺人事件(未遂を含む)をおこす加害者が少なくありません。身勝手極まる許し難い主張ですが、死刑制度の存在が、残虐な事件や重大な殺人事件を抑止することにつながっていないことを示しています。

 殺人事件によって大切な人の命を奪われた被害者遺族や関係者の悲痛な思いは簡単にいやされるものではなく、極刑を望む心情は理解できます。こうした被害者遺族を支える支援策として精神的・経済的支援、法的援助などさまざまな仕組みを充実させることが不可欠です。それは死刑制度の存廃にかかわらず、政府と社会が真剣に取り組むべき最優先課題です。

 強い被害感情も年月がたつにつれて変化することがあります。また被害者遺族のなかには極刑を望まない人もいます。死刑執行によって事件の動機などの解明が永遠に閉ざされてしまい、遺族にとってさらに過酷になることも指摘されています。

まず刑の執行を停止せよ

 政府は、世論調査で国民の8割が制度を望んでいることを死刑存続の理由にしています。しかし、国連自由権規約委員会からは、「世論調査の結果にかかわらず」死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けています。世界の潮流から背を向け続けてはなりません。まず死刑の執行を停止し、廃止に向けて国民的な議論をおこすべきです。


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