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2021年12月26日(日)

大阪府民の声 切り捨てるのか

危険な維新の府議会定数削減案

1人区を全体の7割に

共産党は声が届く制度へ改革案提案

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 吉村洋文大阪府知事が代表を務め、府議会で単独過半数を占める大阪維新の会は、府議会議員定数を88から79へ1割削減する条例改定案を来年の2月議会に提出し、強行しようとしています。その問題点をみます。(大阪府・小浜明代)

来年2月提出狙う

 維新案は、「人口あたりの議員数比で全国最小値を実現する」とし、79に削減すると、東京都の11万611人に1人を抜いて、11万1869人に1人となります。選挙区数は現在の53のままで2人~5人区の9選挙区で1人ずつ減らします。これにより「一票の格差」は現在の最大2・15倍から2・19倍に拡大され、多くの死票を生む1人区は31から36へ全体の7割に達し、全国平均の4割から突出して多くなります。

 維新の会は、2011年6月にも定数を2割も削減する案を単独過半数の力で審議抜きで採決を強行しました。今回は非公開の府議会議会改革検討協議会の場で形だけの「検討」に固執し、議員間の議論はほとんど行われず、合意形成もせず、次回府議選(23年4月)に間に合わせる日程ありきで強行しようとしています。

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(写真)「女性有志アピール」が呼びかけた宣伝で定数削減反対を訴える女性たち=11月30日、大阪市・京橋駅前

 日本共産党は維新案に対し、(1)府民の中に渦巻く多くの願い、多様な民意が府政に届きにくくなり、知事提案など行政の中身をチェックする府議会の役割の弱体化につながる(2)1人区がさらに増えることで府民の声がますます切り捨てられ、死票が12万4000票余り増える(3)「一票の格差」の拡大で「法の下の平等」を侵す現状をさらに悪化させる―と問題点を指摘。多様な民意を反映する民主的な府議会にするため、88の定数は維持し、合区で1人区を8に減らし、「一票の格差」を最大1・95倍へ縮小する改革案を出しています。

 吹田市議会では9月定例会で、日本共産党と立憲民主党系会派が共同提案した反対意見書を賛成多数で可決。石田法子元大阪弁護士会会長や学者ら女性10氏が10月、定数削減に反対する「女性有志アピール」を発表するなど、府民からも定数削減に反対する声があがっています。

審議形骸化する危険性

大阪経済大学 柏原誠准教授

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 大阪維新の会の定数削減案は2019年府議選の結果に削減案の定数を適用して試算すると自民党は4減、公明党は2減、共産党は2減という結果になりました。

 選挙区制の選挙では有力な立候補者数は選挙区の定数プラス1になる傾向があり、小選挙区では立候補の段階で多様な民意を反映する選択肢が狭められます。

 1人区の増加では「民意の反映」ではなく「民意の集約」の議員・議会になり、多様な観点や利害関心から政策を議論し、首長をチェックするという二元的代表制の下での「議会の特性」が失われてしまいます。大都市部の有権者の利害関心は小選挙区制ではくみ取れない多様性をもち、政党化が進んだ府議会では比例代表制にするか、選挙区の定数を最低3人にするなど抜本的改革の検討も求められます。

 定数削減で維新の会の影響力が増すとすれば、チェックアンドバランスを目的とする地方議会のあり方として問題があります。大阪府議会では、議会がチェックする対象である知事が、議会過半数を占める政党の代表をしているため、議会のチェック機能がほとんど機能せず、議会審議が形骸化する危険性が増します。

 また定数削減案は維新の「身を切る」公約から出てきていますが、切られるのは府民の多様な意見です。府議会の役割や定数はいくらがふさわしいかという本質的な議論や説明が行われていないことも問題です。

女性選出さらに困難に

定数削減に反対する「女性有志アピール」呼びかけ人 長尾ゆり前全労連副議長

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 維新の会の定数削減は「議会なんていらない」と言わんばかりです。「身を切る改革」と言いますが「民意を切り捨てる大改悪」です。多様な府民の声が無視され、民主主義が壊されてしまいます。政府の男女共同参画会議は都道府県議会で1人区が増えていることが女性の進出をさらに困難にしていると指摘しています。府議会議員88人中女性はたった6人です。さらに1人区を増やすのはジェンダー平等の流れに逆行します。コロナ感染者全国最多が続いた大阪では多くの女性が命とくらしの危機に直面しています。虐待・DV・貧困に苦しむ女性もいます。こんな女性の声が届く府議会であってほしいのです。


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