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2021年12月24日(金)

希望を携え 126万軒訪問

チリ大統領選 左派逆転ドラマ

中道・無党派と対話作戦

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(写真)チリの各地でボリッチ候補支持を広げる「100万軒対話作戦」に参加したボランティア(ボリッチ候補のツイッターから)

 19日に投開票された南米チリの大統領選決選投票では、新自由主義からの転換を訴えた左派のボリッチ下院議員(35)が当選しました。第1回投票(11月21日)では極右のカスト候補を追う2位でしたが、逆転での勝利。地元メディアなどは決定的だったのはボリッチ陣営の「100万軒対話作戦」だと分析しています。

 ボリッチ氏を支えていたのは出身政党「拡大戦線」やチリ共産党など左派連合。第1回投票の結果、中道右派や中道左派の候補が姿を消した状況のもと、中道系政党支持者や無党派の人々への働きかけが極めて重要となっていました。

 そこで、ボリッチ陣営が5日から始めたのが、有権者の家を訪ね対話する「100万軒対話作戦」でした。投票日までの10日余りで全国の世帯数の2割近くを訪問する異例のとりくみでした。

 作戦には5月の選挙で当選した首都圏の中心自治体サンティアゴの共産党員市長イラシ・ハスレル氏など著名な政治家や文化人も参加。全国で数千人のボランティアが活動し、約126万軒を訪問したといいます。

 ハスレル市長は「変革と希望のメッセージを持って隣人を一人ひとり訪ねよう」と強調。陣営がこの作戦で特に重視したのは、有権者の声を聞き、ボリッチ候補の公約や提案を伝えることでした。

 女性運動の活動家マリソル・ベリオスさん(61)は、首都圏南部の貧困地域で作戦に参加した経験をドイツの左派系紙に語っています。ベリオスさんは、宣伝資材を配りながら一軒一軒を訪ねて回りました。日頃から投票率が低く、右派勢力の宣伝によって「共産主義への恐怖」が広がっている地域でした。「多くの人が投票のやり方もわからなかった。そういう人々と対話しなければならなかった」と振り返ります。

女性票が決定的役割

ジェンダー政策に支持

 ベリオスさんは、ボリッチ氏とは意見の違いもありました。しかし、ピノチェト軍事独裁(1973~90年)を賛美するようなカスト候補が第1回投票でトップに立ち、「ファシズムが再び確立されかねないもとで、(意見の違いといった)問題は脇に置く必要がある」と考え、訪問作戦に懸命にとりくみました。

 結局、決選投票の投票率は約55%で、投票が非義務化された以降の選挙では最高を記録。投票率上昇はボリッチ氏に有利に働いたとみなされています。メディアは対話作戦の「効果は感動的なほどだった」と報じました。

 地元紙テルセラ20日付は、民間機関が投票動向を分析した報告を掲載。これによると、30歳以下の女性有権者の投票率が第1回投票に比べ10ポイント上昇し、63%となりました。この世代のボリッチ支持は68%を記録。女性、特に若い女性が「ボリッチ勝利の原動力」と報じられています。

 ボリッチ氏は当選を決めた19日の演説で「多くの犠牲を払って勝ち取った権利を守るために全国で組織的に活動した女性のみなさん、ありがとう」と述べ、新政権を「フェミニズムの政府」にすると改めて強調しました。

 ボリッチ氏は、ジェンダー平等を主要政策の一つとして位置づけ、「決定するための性教育、中絶しないための避妊、死なないための合法的な中絶を」と演説。また、コロナ禍で女性の多くが職を失ったことを踏まえ、50万人の女性への雇用創出などを公約してきました。中絶合法化に反対を唱え、女性省廃止を主張したカスト候補とは雲泥の差です。

 ジェンダー問題の専門家の多くが、ボリッチ氏のジェンダー平等の政策が女性たちに支持されたと指摘しています。


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