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2021年12月20日(月)

きょうの潮流

 日々寒さが増し、野は冬枯れ…と思いきや、じつは12月は実りの季節です。「クラムボンはわらったよ」で知られる宮沢賢治の童話「やまなし」もそう。川底のカニの兄弟にとってカワセミに狙われる怖い5月に対し、12月はヤマナシが熟す楽しみな時期だと▼近所で借りたうちの畑でも、ネギやカブなど冬野菜が収穫時です。9月末に種をまいた大根が、もう土から十数センチも飛び出すほど大きくなりました。〈大根引(だいこひ)き大根で道を教えけり〉小林一茶▼ブロッコリーも冬が旬。日本で広まってまだ40年ほどです。季語としても新しく、詠まれ方もおもしろい。〈ブロッコリーの堅き団結解き放つ〉諸角直子、〈ブロッコリ小房に分けて核家族〉清水裕子▼白菜も冬の鍋料理には欠かせません。1日干して浅漬けすれば日持ちもします。〈白菜を漬けて曠野(こうや)に生きんとす〉。俳人の金子兜太が師事した加藤楸邨(しゅうそん)の句。凜とした決意と白菜の取り合わせにユーモアが漂います▼楸邨には〈十二月八日の霜の屋根幾万〉の句も。1941年の作です。開戦の日の緊張感、国民を覆う不穏さが感じられます。今年はアジア・太平洋戦争開戦80年。新聞やテレビでも多くの特集が組まれました▼〈大戦起(おこ)るこの日のために獄をたまわる〉。プロレタリア俳句の運動に尽力した橋本夢道の句です。治安維持法の違反容疑で検挙され、開戦を獄中で知りました。戦争の時代は俳句も自由に詠めませんでした。そんな時代が再びこないように心新たにしたい12月です。


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