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2021年12月4日(土)

きょうの潮流

 戦前、不治の病と恐れられた感染症の結核。東北帝国大学医学部を卒業し、岩手県志和(しわ)村(現紫波町)の診療所で、結核の治療、調査にあたった若き医者がいます▼戦後、民医連の会長を務めた高橋實(みのる)医師です。貧しい農村では出稼ぎが多く、感染して帰村し死亡する人が多くいました。療養する部屋は、納戸とよばれる窓のない小さな寝室に万年床を敷いただけ。同居する家族の感染も深刻でした▼対策で画期的だったのが全村民5千人余へのツベルクリン反応の集団検診です。63人の患者を発見、感染の分布をつかみ、感染源を追求しました。B・C・Gの予防接種、病床20、結核病床10、レントゲンや結核菌検査の設備を備えた診療所建設につながりました▼医師の熱情に押されるように、村民が自主組織、結核予防会を結成。村長、組合長、校長、警防団長らが積極的に動きました。経済的な事情を考慮し、無料・半額の医療費という減免も取り入れました▼こうした実践をもとに80年前、朝日新聞社から『東北一純農村の医学的分析』を出版。「講座派」のマルクス主義理論の影響を強く受け、科学的な分析に徹しました。専門家からは「結核に関する限り、わが国の最高の水準にまで登り得た」との高い評価を得ました▼この実践は、その後の結核とのたたかいに大きく貢献しました。無自覚者を発見するための全住民への検査、予防接種、医療設備の充実、弱者救済の措置、科学の重視などは、コロナ禍だからこそ生かしたい教訓です。


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