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2021年10月29日(金)

きょうの潮流

 「アメリカの野郎、よくもやったな。このお返しは、きっとするぞ」。当時20歳の学生は、ひん死の状態のなかで軍国青年の激情に包まれたといいます▼広島に原爆が落とされた朝は通学途中でした。爆心地から1・2キロの路上で吹き飛ばされ、全身に大やけどを負った坪井直(すなお)さん。意識不明に陥るまで目にした光景は、夢に何度もでてくるほど鮮明に残りました▼死の行進、悲壮な叫び、地獄のような惨状。はうようにして着いた御幸橋のたもとで記した「坪井はここに死す」。遺言のつもりが周りの人から助けられ、その恩返しと命のありがたさが被爆者運動の原点となりました▼戦後はみずから「ピカドン先生」と名乗り、原爆の恐ろしさと平和の尊さを子どもたちに伝えました。米国をはじめ海外にも渡り、あの大きな声と体中からみなぎる迫力で「ノーモア・ヒバクシャ」を訴えてきました。いつしかお返しはともに核なき世界をつくることへ▼「長年の悲願である核兵器の禁止・廃絶を具体化する大いなる一歩」。核兵器禁止条約の発効が決まった際は、多くの被爆者の思いを代弁するように。しかし岸田自公政権は、唯一の戦争被爆国、広島に血縁のある首相でありながら、背を向け続けています▼96歳の生涯で入退院を10回以上もくり返し、二つのがんを抱えながら、最後のひと呼吸まで核廃絶をあきらめないと語っていた坪井さん。その遺志を受け継ぐ人々のたたかいはこれからも。彼の締め言葉のように「ネバーギブアップ」。


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