しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年10月14日(木)

小池書記局長の代表質問 参院本会議

 日本共産党の小池晃書記局長が13日の参院本会議で行った、岸田文雄首相に対する代表質問は次のとおりです。


 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。

森友・「桜」疑惑の再調査なくして国民の「信頼と共感」はない

写真

(写真)代表質問をする小池晃書記局長=13日、参院本会議

 総理は所信表明演説で、「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要」と述べました。しかし、森友公文書改ざんについて「再調査すべき」という世論にも、「桜を見る会」についての安倍元総理の説明に「納得できない」という世論にも背を向けたままで、「信頼と共感」が得られるとお考えか。お答えください。

 森友公文書改ざんを強いられ、自死された赤木俊夫さんの妻・雅子さんは、総理への手紙に「岸田さんならわかってくれる」と書いた理由をこう述べています。

 「総裁選の時、岸田さんは最初、再調査をするような発言をしていました。でもすぐに変わりました。誰かから何か言われたのでしょうか? 本当は再調査すべきだと思っているから、最初そう言ったんだと思います。正しいことが正しいと言えない社会はおかしい。それが誰よりわかるはずだから、こう書きました」

 この声をどう受け止めますか。総理は、「国民の声が政治に届かない。政治の説明が国民の心に響かない」とし、「今まさに、日本の民主主義が危機である」と述べられましたが、このままでは、安倍・菅政権と何も変わりません。民主主義の危機打開など、到底望めないのではありませんか、お答えいただきたい。

コロナ感染拡大をどう抑え込むか

 新型コロナウイルス感染症をどう抑え込むか。政治の最大の課題です。

大規模検査の推進――いつでも、誰でも、無料で

 日本共産党は、ワクチンと一体での大規模検査、医療・保健所への支援、そして、まともな補償という、3本柱での対策を求めています。

 感染の伝播(でんぱ)を断ってコロナを封じ込めるには、「大規模・頻回・無料」の検査体制確立が必要です。「いつでも、誰でも、無料で」PCR検査が受けられるようにすべきです。職場、学校、保育所などでの自主検査を大規模かつ無料で行えるように、国が思い切った補助を行うべきです。見解を伺います。

 昨年、厚生労働省は、PCR検査の拡大が「医療崩壊を招く」とする文書を配布して検査抑制を図りました。しかし、まったく逆に、必要な検査を怠ったことが、感染を拡大させ、医療崩壊を引き起こす要因となったのです。

 総理は、厚生労働省による検査抑制策の誤りを認めますか。根本的に清算し、国の責任による大規模検査の推進へ、かじを切るべきではないか、お答えください。

医療・保健所への支援――削減策をやめ大幅拡充を

 全国の保健所は、自民党政権の「行革」路線のもと、90年代の852カ所から、469カ所へ、半分に減らされました。その結果、感染拡大のさいに、保健所の業務がひっ迫し、検査で陽性と判定された人に保健所からの連絡すら届かず、自宅で重症化するなどの事例も相次ぎました。

 総理。保健所の削減が、コロナ対応の大きな障害になったことを反省し、コロナ対策の最前線で奮闘する保健所の予算を抜本的に引き上げ、保健所の数も職員の数も大幅に増やすべきではありませんか。

 総理は、公立・公的病院の統廃合計画について、「病床の削減や統廃合ありきではない」と答弁しました。しかし、自公政権が「地域医療構想」にもとづいて20万床の急性期病床を減らす計画を立て、「骨太の方針」でその「強化」「促進」をかかげているのは、まぎれもない事実です。

 岸田内閣が本当に、「医療難民ゼロ」を実現しようというなら、それに反する「地域医療構想」と「骨太の方針」、消費税収を使った病床削減の仕組み、とりわけ、急性期病床を削減・縮小する計画を、ただちに撤回すべきです。答弁を求めます。

深刻な国民生活への支援ただちに

 コロナのもとで、国民の生活と営業の疲弊は深刻です。

給付金は中身を改善・拡充していますぐ支給を

 総理は所信表明演説で「大きな影響を受ける事業者に対し、地域、業種を限定しない形で、事業規模に応じた給付金を支給します」と述べました。規模に応じた給付金や対象拡大は、かねてからわが党を含む野党が要求してきたものです。持続化給付金、家賃支援給付金の再支給だけでなく、中身の改善、拡充をただちに実現していただきたい。

 また、総理は「非正規、子育て世帯など、お困りの方々を守るための給付金」も実行すると述べました。わが党は、コロナで収入が減った人に対する10万円の「暮らし応援給付金」を提案していますが、いま、すべての党が「給付金を出そう」と言っています。コロナで困っている人たちすべてに、今すぐ給付金を出しましょう。答弁を求めます。

米価暴落から農村を守る――過剰米を買い入れ市場隔離を

 コロナ禍で米価の大暴落が農村を襲っています。昨年と比べ2割から3割下落し、1俵1万円を下回る銘柄も続出し、「このままでは米が作れなくなる」という悲鳴が全国の農村に広がっています。先人から営々として受け継ぎ、人々の命やわが国の歴史、文化を支えてきたコメ作りが崩壊しかねない深刻な事態という認識が、総理にはありますか。

 今回の大暴落は直接的にはコロナ禍による過剰米が原因です。米価の回復には過剰米を政府が買い入れ、市場から隔離する以外にありません。北海道と東北6県の農協中央会会長をはじめ、全国知事会、コメどころの自治体や地方議会も一致して求めています。

 総裁選で総理は、「市場隔離を含めた十分な支援を検討」するとしていましたが、国会で示したのは、「15万トンの特別枠で支援」というもので、これでは米価下落は止められません。即効性のある対策は、過剰米の政府買い入れによる市場隔離です。「制度の趣旨にあわない」などと言っている場合ではありません。明確な答弁を求めます。

 過剰在庫を理由に史上最大の減反拡大をコメ農家に押しつける一方で、この期に及んでも、国内需要の1割に及ぶ77万トンものミニマムアクセス米の輸入を続ける。こんな不条理ともきっぱり決別すべきではありませんか。お答えください。

新自由主義政策の転換こそ必要

 総理は所信表明で「新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と述べました。

 そのとおりです。それがまさにアベノミクスの9年間だったではありませんか。

 2012年以来、大企業の経常利益は1・6倍、株主への配当金は1・8倍となり、報酬1億円以上の役員数は295人から544人と2倍近くになり、内部留保は8年間で133兆円も増加しました。

 その一方で、実質賃金は年収ベースで22万円も減ったのです。

格差を拡大したアベノミクスの反省を求める

 総理は、アベノミクスが「富める者と富まざる者の分断を生んだ」ことを認めますか。富裕層と大企業ばかりが富を増やし、格差を拡大させたアベノミクスを反省し、経済政策を転換すべきではありませんか。

富裕層優遇の株取引税など不公平税制を正せ

 格差を拡大している大きな要因が、日本の不公平税制です。

 日本の所得税の現状は、累進課税とは名ばかりで、実際には、所得が1億円程度を超えると負担率が逆に下がります。株取引に対する税率がきわめて低いからです。

 株式売却益に対する日本の税率は、所得税15%、住民税5%。これに対して、アメリカ、ニューヨーク市の場合には、国税だけで最高20%、州税と市税を合わせれば32%を超えます。しかも、バイデン政権は、国税分の最高税率の5%引き上げを提案しており、実現すれば合計で37%を超えます。

 日本の株取引への税率の低さは、経済同友会やOECD(経済協力開発機構)からも指摘され、その引き上げが提案されてきました。総理が、「分配なくして次の成長なし」というのであれば、なぜ先送りするのか。優先順位が下がったのはなぜですか。お答えください。

暮らしと営業を守る――消費税5%減税を

 消費税増税は、家計に大きな打撃を与え、そのたびに消費が落ち込みました。そこにコロナ禍が重なり、戦後最悪の消費の落ち込みで、日本経済は深刻な危機に陥っています。

 世界では、コロナ危機から暮らしと営業をまもるために付加価値税の減税を実施、または実施予定の国が62カ国にのぼっています。経済危機の打開のためにも、格差是正のためにも、消費税を5%に引き下げるべきではありませんか。答弁を求めます。

気候危機打開――日本の真剣な取り組みこそ

 ノーベル物理学賞を受賞される真鍋淑郎さんは、「気候変動は新型コロナウイルスなどとともに人類の危機だ」と訴えています。世界中で若者たちが中心になって、地球の未来を守ろうと真剣な取り組みが広がっています。

 総理は昨日も、「脱炭素社会の実現に向けて、国際社会を主導する」と述べましたが、G7のなかで唯一、石炭火力からの撤退期限を持たない国です。総理は、これでどうして、国際社会を主導できるというのでしょうか。

 国連は石炭火力からの計画的な撤退を強く要請し、グテレス事務総長は、日本など「最も豊かな国々」に、石炭火力発電から2030年までの段階的な廃止を求めています。

 今月末には、国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が迫っています。わが国は、石炭火力からいつ撤退するのか。その期限を明確にお答えください。

ジェンダー平等が当たり前の社会へ

 ジェンダー平等が当たり前となる社会をつくることも、政治の責任です。

選択的夫婦別姓に背を向ける態度を改めよ

 総理は、3月に発足した自民党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人に名を連ねていました。ところが、いまでは「国民の間にさまざまな意見があり」「引き続きしっかりと議論すべき」と、早期実現とはほど遠い対応です。半年前に、「早期実現」を呼びかけながら、手のひらを返した対応は、あまりに無責任ではありませんか。

 いまやどの世論調査でも、選択的夫婦別姓の導入への賛成意見が多数です。幅広い国民の理解にもかかわらず、導入を阻んでいるのが、自民党内の強硬な反対派です。

 総理の「聞く耳」というのは、国民の声でなく、党内反対派に対するものなのですか。政治家として、自らの言動に責任を持つべきではありませんか。答弁を求めます。

痴漢は深刻な性犯罪――根絶は政治の責任

 最も身近な性暴力のひとつであり、性犯罪である痴漢被害への対策について聞きます。

 これまで痴漢は「ささいな問題」、あるいは「女性が注意すればすむこと」とされ、多くの被害者が泣き寝入りさせられてきました。しかしその実態は非常に深刻です。

 昨年わが党の東京都委員会・ジェンダー平等委員会が行った痴漢被害のウェブ調査では、初めて被害にあった年齢が18歳以下という回答が7割をこえ、中・高校生の「通学中、ほぼ毎日被害にあう」という回答も目立ちました。

 痴漢は「子ども・未成年への性暴力」でもあるのです。

 被害の後、「電車に乗ろうとすると過呼吸になり仕事をやめた」「頻繁なフラッシュバックに苦しみつづけている」という声も多数寄せられました。被害が一人ひとりの人生に大きな苦しみをもたらしていることを、私たちは重く受け止めるべきです。

 電車に乗る。道を歩く。――そんな当たり前の日常が性暴力の危険にさらされていることを、政治が無視し、軽んじていいのか。

 痴漢被害に本気で取り組むことを、政治の課題にすべきではありませんか。お答えください。

 いま、高校生、大学生のみなさんが始めた「本気の痴漢対策求めます!」というオンライン署名が広がっています。ここで求められているのは、国の責任による痴漢の実態調査です。

 国が本格調査に乗り出すことは、この問題が決して「迷惑行為」というような問題ではなく、政治の責任で、根絶しなければならない性犯罪であることを明らかにするメッセージともなります。

 実態調査の必要性について、この問題に取り組む人々に、勇気と希望を与える答弁を求めます。

辺野古新基地建設の断念を求める

 沖縄・名護市辺野古での米軍新基地建設に関して聞きます。

 政府が、沖縄戦最後の激戦地である本島南部から、遺骨の混じった土砂を採取して、新基地建設の埋め立てに使おうとしていることに、全国の自治体で反対の意見書が可決されるなど、怒りの声が広がっています。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は、自民党総裁選の立候補者全員に、この問題についての公開質問状を出しましたが、誰一人として回答しませんでした。

 具志堅氏は記者会見で、「回答すらなくがっかりした。戦没者に対する救済の意識をもっていないと思える。そういう人がこれから先、日本の国をリードすると思うと、残念と言うよりも非常に悲しい」と述べています。

 総理は、この声にどうこたえますか。

 南部からの土砂採取計画は、軟弱地盤改良のためとして、政府が「設計変更申請」で盛り込んだものです。戦没者を冒涜(ぼうとく)し、遺族の心情をふみにじる土砂採取計画は撤回し、設計変更申請は取り下げるべきではありませんか。

 沖縄県民は、日米両政府が普天間基地の全面返還で合意してから四半世紀、一貫して新基地建設に反対の意思を示し続けてきました。県民投票では、辺野古の埋め立てに反対が7割を超えました。

 総理。この県民の声に真摯にこたえるべきではありませんか。

 辺野古新基地建設の断念、普天間基地の閉鎖・撤去の決断を強く求めるものです。

唯一の戦争被爆国がやるべきは核兵器禁止条約への参加

 総理は所信表明で、「被爆地広島出身の総理大臣」であると語りながら、広島の悲願である核兵器禁止条約について一言も触れませんでした。

 核兵器禁止条約の発効へ国際社会を動かしたのは、核兵器は人類と共存できないという被爆者の訴えでした。総理は、昨日の答弁でも「核兵器国が1カ国も参加していない」として条約への参加に背を向けました。

 しかし、核兵器の非人道性をどの国よりも理解する唯一の戦争被爆国がやるべきことは、核兵器禁止条約に参加して、世界の国々や市民とともに、核兵器国に核廃絶を迫ることではありませんか。お答えいただきたい。

 被爆者であるサーロー節子さんは、「広島出身の首相ということで、これまで以上に世界から注視される」「市民や被爆者の声に耳を傾け、リーダーシップを発揮してほしい」と求めています。総理は、この声にどうこたえますか。

 被爆地出身の総理大臣にふさわしい世界への発信と行動が、求められていると思いませんか。

 そのことを強く求めて、私の質問を終わります。


pageup