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2021年9月19日(日)

主張

日ロ領土問題

不当な戦後処理ただす外交を

 ロシアのプーチン大統領が3日、「クリル諸島」(千島列島)全域で法人税、資産税、土地税、輸送税など「主要な課税」を10年間免除し、日本を含む外国企業を誘致するための経済特区にすると打ち出しました。今年中の実現をめざすといいます。日本の正当な領土である千島列島への不当な実効支配を強めようとする措置で、日ロ領土問題の公正な解決に新たな障害をもちこむ行動です。

相次ぐ一方的な措置

 ロシアでは昨年、領土割譲を禁止し、第2次世界大戦で「確定」した領土は交渉の対象にしないと明記した憲法改正が行われました。日本との関係では、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島なども交渉対象にしないことになります。覇権主義むき出しの態度であり、このようなやり方は、ロシア国内で決めた措置であっても国際的には効力をもちません。

 日ロの領土問題は、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を連合国側が破ったことに始まります。ヤルタ協定(1945年2月)で、ソ連の当時の指導者スターリンの要求に米英が応じ3カ国で「千島引き渡し」を決め、それに沿ってソ連軍が千島などを占拠、日本の住民を追い出し一方的に自国領として編入しました。この不法占領を「第2次世界大戦の結果」として認めよと日本に迫っているのが、今のロシアです。

 しかし、国後、択捉はもちろん、それ以北の得撫(うるっぷ)から占守(しゅむしゅ)までの北千島を含む千島列島全体が1875年のロシアとの「樺太・千島交換条約」で平和的に確定した歴史的な日本領です。プーチン政権の主張は極めて不当です。

 ロシアの覇権主義に物を言わない日本政府の姿勢も厳しく問われています。日本は、「千島引き渡し」というヤルタ協定の不当な取り決めに従ってつくられたサンフランシスコ平和条約(1951年)で、千島列島に対する「すべての権利、権原および請求権を放棄」すると宣言しました。その誤った表明をただすことなく“国後と択捉は千島ではない”と言い出し、この2島と、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)という北海道の一部で性格の違う諸島をまぜ合わせ「北方領土」とし、4島だけの返還を求めてきました。国際的に通用しない論理と外交です。

 さらに安倍晋三前政権は、4島返還という従来の日本政府の立場さえ投げ捨て、事実上、歯舞・色丹の2島のみの返還で領土問題の決着をはかる立場に後退しました。交渉加速のためとして4島での日ロの共同経済活動も提案しました。しかし、経済協力を進めて領土問題を打開しようとするやり方は、これまでと同様に行き詰まります。それが今回のプーチン大統領による一方的な経済特区の発表にまで至ったのです。

不拡大の原則に立って

 日本側に必要なのは、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の原則に立ち、不公正を正すという道理に基づく外交への転換です。サンフランシスコ条約での千島放棄を根本的に再検討し、全千島を返還対象として交渉すること、歯舞、色丹は全千島の返還を待たず速やかに返還を求めることを日本共産党は訴え、ソ連時代から行動してきました。来たる総選挙で日本共産党が躍進することが、日ロ領土問題の公正な解決でも大きな力となります。


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