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2021年9月1日(水)

きょうの潮流

 いろんな花でいっぱいになる春。アンズやスモモにサクランボ、村じゅうが甘い香りに包まれる収穫の夏。果物売りの父を手伝い、街に出かけた少年は子羊を連れて村に帰っていく▼アフガニスタンの小村を舞台にした『せかいいち うつくしい ぼくの村』です。絵本作家の小林豊さんが四半世紀も前に描きましたが、その頃すでにこの国は戦火にまみれていました。実際、本の中にも戦争の暗い影が落ちています▼シルクロードの要衝として、かつて文明の十字路といわれた国は、同時に大国の緩衝地帯となってきました。1979年にはソ連が侵攻。米国などが反政府組織への武器供与やゲリラの養成、訓練と干渉を強め、アフガンの自主独立と民族自決権をふみにじってきました▼アメリカが9・11テロの報復に乗り出してから20年。混乱のさなかの撤退は最後まで血の応酬を招き、爆弾テロで多くの民間人が犠牲になれば米軍の空爆では子どもの死亡も伝えられています▼タリバンによる統治は今後の行く末を案じさせます。ユニセフは長年の紛争と治安悪化によって最も重い代償を払い、これまで以上に危険にさらされている子どもたちへの支援拡大を国際社会に呼びかけます。いま、彼らを見捨てることなどできないと▼春を意味する「バハール」という名を子羊につけ、家族が増えたと喜ぶ少年。しかし先の物語は悲しい結末をむかえます。大国に翻弄(ほんろう)されて国を壊されてきた現実とともに、再び平和な春が訪れることを願いながら。


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