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2021年8月9日(月)

鼓動

LGBT公表の五輪選手

「多様性と調和」真剣さ試される 日本選手公表ゼロ 法も未整備

 LGBT(性的少数者)選手の情報を発信するメディア「アウトスポーツ」によると、東京五輪でLGBTを公表する選手の数は182人(4日時点)に上り、過去最多となりました。その数は、2016年リオデジャネイロ五輪の3倍以上でした。

 「ゲイ(男性同性愛者)であり、五輪王者であることを誇りに思う」―。13年に同性愛者であることを公表し、4度目の五輪で金メダルを獲得した、男子シンクロ高飛び込みの英国代表トーマス・デーリー選手(27)は、LGBTの若者へ励ましのメッセージを送りました。

 サッカー女子決勝ではカナダがスウェーデンを破り、MFクイン選手(25)がトランスジェンダー(心と体の性が異なる人)を公表する初の五輪メダリストとなりました。

いまだに“壁”も

 五輪憲章は14年から「性的指向による差別の禁止」を明記。15年にはトランスジェンダーの参加条件が緩和され、東京五輪・パラリンピックではテーマの一つとして「多様性と調和」が掲げられました。大会中、LGBTに関する情報発信を行う施設「プライドハウス東京レガシー」を運営する松中権(まつなか・ごん)さんは「カミングアウトしている選手が多いということは社会が変わってきた証しだと感じる」と話します。

 一方、LGBTを公表する選手は圧倒的に女性が多い。松中さんは「スポーツでは『スピード』『パワー』といった男性性がより強調され、いまだ男性にとってカミングアウトしづらい状況がある」と指摘します。

 LGBT関連のスポーツ問題を研究する団体「アウト・オン・ザ・フィールズ」の20年の調査によると、80%以上のゲイ選手が競技中に同性愛者を侮辱する言葉を耳にしたことがあると回答。指導者からの差別やチームメートに拒絶されることを恐れ、自身の性的指向を隠していた22歳以下のゲイ選手は81%に上りました。

 米ペンシルベニア州ディッキンソン大学のシュワイクフーファー教授は米CNNに対し、「男性は『弱々しい』『感情的』といった“女らしさ”をみせないよう教育される。男子スポーツ界も、異性愛者が持つ“男らしさ”という狭い考え方に縛りつけられている」と指摘。そのため、ほとんどのLGBT選手は若いうちにスポーツから離れる傾向があるとして、地域や学校レベルでの対策が必要だとします。

 LGBTは無意識に差別され、自ら公表しにくい雰囲気があります。松中さんは「指導者をはじめ環境づくりを担う人たちが、多様性とは何なのか、当事者のカミングアウトに頼ることなく知る機会が必要」だと言います。

言葉だけなのか

 東京五輪で30カ国・地域の選手たちがLGBTを公表する中、開催国の日本には公表する選手が一人もいません。

 全国のLGBT関連団体は今年3月、五輪憲章に掲げる「性的指向による差別を禁止」する「LGBT平等法」の実現を目指し、10万以上の署名を各政党に提出。しかし、自民党から反対意見や差別発言が飛び出し、法制化は見送られました。

 国際オリンピック委員会(IOC)との開催都市契約には開催国も含めて五輪憲章を順守することが明記されています。松中さんは「政府は約束を守らない、差別はなくならなくていいものだと表明した」と肩を落とします。

 五輪で掲げた「多様性と調和」が言葉だけに終わるのか。日本の社会やスポーツ界の真剣さが試されます。

 (石黒みずほ)


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