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2021年7月25日(日)

きょうの潮流

 新型コロナ感染が拡大する中で始まった東京オリンピック。開催を強行する政府の姿勢が、無謀な戦争を始めたときと似ているという意見を時々聞きます▼今年は、多くの犠牲者を出したアジア太平洋戦争の開始から80年。開戦に先立ち、春頃から日米交渉がもたれました。最大の焦点は、日本軍の中国からの撤退問題で、満州事変前の状態に戻せという要求です▼日本政府は、米国から根本的な政策の再検討を求められても、中国問題に口出しするなとまともに取りあわず、「対英米戦を辞せず」と早ばやと決定しました。東条英機首相は、最後まで「駐兵により始めて日本の発展に期する」との考えでした▼では、戦争に勝てる見込みがあったのでしょうか。昭和天皇が永野修身(おさみ)軍令部総長に「絶対に勝てるか」と質問したら「絶対とは申しかねます。しかし、勝てる算のあることだけは申し上げられます。必ず勝つとは申し上げかねます」。天皇は大声で「あゝわかった」と。翌日には実質的な開戦が決定されました▼『太平洋戦争への道』(NHK出版新書)で、歴史家の半藤一利氏は、戦争を避けるには米側の要求をのんで「中国や南部仏印から撤兵すればよかったんです」と端的に語っています▼そもそも、日米の国力のレベルが違いました。開戦時のGNPと鉄鋼生産は12倍、石油の備蓄が7・8倍、石油精製能力は52倍の差です。願望だけで突入した戦争の代償はあまりに大きい。無謀さがひきおこす犠牲は、戦争だけとは限りません。


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