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2021年7月24日(土)

主張

エネ計画の素案

原発・石炭にまだ固執するのか

 経済産業省が国のエネルギー政策の中長期方針となる新たな「エネルギー基本計画」の素案を公表しました。2030年度の電源構成の目標で、原発は従来の20~22%のままです。再生可能エネルギーは36~38%へ引き上げる一方、温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電は19%とし、依然として固執する姿勢を示しました。気候危機の打開に向けて排出量の大幅削減の努力を続けている世界の国々の動きと比べ落差はあまりに大きすぎます。これでは地球の現在と未来に責任を果たせません。根本的な見直しが必要です。

再稼働の推進を大前提に

 エネルギー基本計画はほぼ3年に1度改定されています。18年に安倍晋三政権が閣議決定した現在の計画は、原発と石炭火力を「ベースロード(基幹)電源」と位置付ける一方、再エネの比率については30年度で20~22%にとどめるなど「脱炭素」の世界的な潮流に背を向けたものでした。

 菅政権は今年4月、30年度の温室効果ガスの新たな削減目標(13年度比46%)を打ち出しました。しかし、21日に経産省が提示した素案は、現行計画の枠組みを基本的に変えずにいます。

 原発の割合を同じにしているのは、「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」という立場にしがみついているためです。国民世論の批判が大きい原発新増設については記載を見送ったものの、「必要な規模を持続的に活用」する姿勢を鮮明にしました。運転から60年以上経過した原発を使うことをにじませる記述もあります。

 19年度の原発の電源構成は6%です。それを20~22%にするということは、電力会社から稼働の申請のある27基の原発を全て動かすという前提です。東京電力福島第1原発事故後に再稼働した原発は10基です。その2倍以上をフル稼働させようという方針は、安全無視、民意の逆行そのものです。

 国民の反対世論の広がりで再稼働は政府の思惑通りに進んでいません。30年に太陽光の発電コストが原発より安くなると政府でさえ認めざるを得なくなりました。原発の「核のゴミ」の処分場建設も行き詰まっています。原発頼みのエネルギー政策の破綻は隠せません。再稼働はやめて「原発ゼロ」に踏み切ることが不可欠です。

 温室効果ガス削減の課題に直結する石炭火力を30年になっても2割近く存続させることは、世界の流れと真逆です。イギリスやフランスは早期の石炭火力のゼロを掲げています。主要7カ国(G7)気候・環境相会議では、石炭火力に執着する日本の特異な姿が浮き彫りになりました。石炭火力全廃に逆らう姿勢が問われます。

世界への責任を果たせ

 再生可能エネルギーの目標を30%台に上げたことは、国内外の世論と運動の反映です。しかし、まだまだ低い水準です。欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は、30年に電源構成を65%にすることを目標にしています。日本もさらなる引き上げが求められます。その際、乱開発や環境破壊を許さない住民本位のルールを定めることが必要です。省エネの徹底も重要です。政府は10月にも基本計画を閣議決定する予定です。気候危機に真剣に立ち向かう計画に改めるべきです。


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