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2021年7月16日(金)

主張

飲食店への圧力

首相の責任逃れは許されない

 コロナ対策をめぐって酒類を提供する飲食店に取引停止の圧力をかけた政府方針は、業者、国民の批判が集中して撤回に追い込まれました。直接の責任者である西村康稔経済再生担当相は辞任すべきです。しかし、西村氏一人に責任を負わせることは許されません。菅義偉首相は関係閣僚会合でこれらの方針を了承しています。責任から免れることはできません。

憲法と法律に反する脅し

 問題になったのは、4回目の緊急事態宣言で酒類の提供停止に応じない飲食店に対して(1)金融機関から働きかける(2)国税庁を通じて酒類販売業者に取引を停止させる―という方針です。融資、仕入れの停止で飲食店を脅し、従わせようとするものです。

 6月の時点で内閣府と内閣官房が各都道府県に事務連絡を出し、酒類販売業者が支援金を申請する際、酒類を提供する飲食店と取引しないよう誓約させていたことも明らかになりました。

 方針を撤回して済まされる問題ではありません。「営業の自由」は憲法22条で保障された権利です。優越的地位の乱用を禁じた独占禁止法にも触れる行為です。営業規制の命令に従わない事業者に過料を科すことができるとしたコロナ特別措置法にも、銀行や仕入れ業者を通じた圧力を正当化する規定はありません。憲法と法に反する行為です。

 問われるのは菅首相の姿勢です。西村担当相が8日に方針を発表し、国民から批判を浴びると、首相は「承知していない」と説明しました。しかし、首相が出席した7日の新型コロナウイルス関係閣僚会合で事務当局がこの方針を説明し、異論なく了承されていたことがわかりました。すると首相は「具体的な内容を議論したことはない」と言い逃れに転じました。

 政府として決定した方針だったことは動かしがたい事実です。方針を実行するための事務連絡文書も出ています。

 4回目の緊急事態宣言を出すにあたっての政府の基本的対処方針には、飲食店対策の「さらなる強化」が盛り込まれています。今回の措置はこれを踏まえたものです。基本的対処方針を決める対策本部の責任者は菅首相です。

 政府のコロナ対応への国民の不信をさらに深めたという点でも重大です。飲食店は、十分な補償がない中で営業への制約が長期化し、店を続けられるかどうかの瀬戸際です。経営や従業員の生活を考えて酒類提供停止の要請に応じるかどうか苦渋の選択を迫られています。持続化給付金の第2弾の支給をはじめ抜本的な支援強化こそ必要です。それもせず、脅迫で従わせようとするところに菅政権の強権体質があらわれています。

五輪中止直ちに決断せよ

 東京の新規感染者数は急増し続け、事実上の「第5波」です。感染を抑止できないのは菅政権がオリンピック開催に固執しているからです。外出、移動の自粛を求める一方で、世界最大規模のイベントである五輪は開催するという菅政権の矛盾した行動に国民は怒りを募らせています。命を犠牲にする五輪開催を強行してはなりません。直ちに中止を決断し、感染抑止に全力をあげるべきです。

 コロナ対応で政府がなすべきことを決めるためにも臨時国会の召集が急務です。


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