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2021年6月16日(水)

主張

最低賃金 改定議論

大幅引き上げと全国一律制を

 2021年度の最低賃金の目安について厚生労働省の中央最低賃金審議会で改定に向けた論議が始まります。20年度は新型コロナウイルス感染拡大による経済危機を理由に、全国平均1円増にとどまりました。コロナ危機で労働者が苦境に陥り、経済が落ち込んでいる中、今年こそ大幅な最賃引き上げと地域格差の是正を求める声に応えるべきです。

コロナ危機の中でこそ

 現在、最賃の全国平均は902円です。東京都と神奈川県だけが1000円台で、16県が700円台です。1013円の東京でも1日8時間、週5日働いて年収約210万円にしかなりません。

 コロナ危機の中で医療・介護、福祉・保育、小売業など社会の生活基盤を支えている「エッセンシャルワーカー」の多くが最賃に近い低賃金であることは重大です。低賃金労働者の多くが非正規雇用の女性です。ジェンダー平等を実現する上でも最賃増額による底上げが求められます。

 全労連の調査によると、最低生計費を時給換算すれば、全国どの地域でも1500~1600円です。都道府県ごとに最賃に差をつける理由はありません。

 日本共産党は、最賃を全国一律制にし、どこでもただちに時給1000円に引き上げ、すみやかに1500円をめざすことを主張しています。1日8時間、週5日働いて月約25万円になります。人間らしい生活をおくるための最低限の要求です。

 日本商工会議所は最賃引き上げが中小企業の経営を圧迫するとして、据え置くよう菅義偉首相に申し入れました。その一方、政府の経済財政諮問会議では財界代表を含む民間議員が、最賃が低い地域での引き上げが雇用増に寄与したとして地方での最賃増額を要望しました。同会議が9日に示した21年の「骨太の方針」原案は「格差是正には最低賃金の引き上げが不可欠」と明記しました。

 菅首相は「早期に全国平均で1000円をめざす」というにとどまっています。格差の是正、地域経済再建の願いには及びません。

 中小企業支援の抜本的強化と一体に最賃を引き上げることは、コロナ危機で落ち込んだ経済の立て直しに貢献します。最賃引き上げに向けた政府の中小企業助成金は20年度3次補正予算で14億円、21年度予算で11・9億円しかありません。年7000億円の国費を投入し、社会保険料の事業主負担を減免するなど中小企業支援を強めれば、3年程度で全国一律1500円に近づけることができます。政府の決断が決定的に重要です。

欧米は格差是正で増額へ

 格差の是正を求める声は世界各国で政府を最賃増額に突き動かしています。米国では最賃を増額する州が増えています。バイデン政権は全国一律15ドル(約1600円)の最賃を実現する法案の可決を議会に呼びかけました。欧州連合(EU)は「働く貧困層」をなくすことをめざして、加盟国に「適正な最賃」を義務づける指令(EU法)の制定を提案しています。

 全国一律の最賃は世界でも当たり前の制度です。中央最賃審の資料は英仏独米、韓国が全国一律制を導入していることを示しています。日本でも世論を高め、最賃の大幅引き上げと全国一律制を実現しましょう。


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