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2021年6月7日(月)

カナダ 子ども215人の遺骨発見で高まる声

先住民同化 調査・謝罪を

各地で追悼、国連も要求

 【ワシントン=島田峰隆】カナダ西部ブリティッシュコロンビア州で5月下旬に、かつての先住民同化政策の一環として建てられた寄宿学校の跡地から子ども215人の遺骨が発見されました。被害の実態の全面的な調査や被害者への謝罪をカナダ政府やバチカンに求める声が国内外から上がっています。


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 遺骨が見つかったのはブリティッシュコロンビア州カムループス近郊の寄宿学校跡地です。学校は1890~1969年にかけて、政府の委託でカトリック教会が運営していました。

 5月30日にはカナダ全土で、連邦政府や地方自治体の庁舎などに半旗が掲げられました。31日にはカムループスの市民や先住民が学校跡地で追悼式典を開催。その後も全国各地で集会を開いたり、子ども用の靴を並べたりして追悼する動きが広がっています。

加害者の訴追を

 カムループスの先住民の代表は6月4日、ロイター通信に「われわれはカトリック教会からの公式の謝罪を求める。われわれだけでなく世界に対する謝罪だ」と述べました。

 中東部オンタリオ州にあるカナダ最大の先住民保留地は5月31日、トルドー首相に送った公開書簡で「悲嘆に暮れている」と表明。政府自身が寄宿学校を推進したとして、オンタリオ州にある別の学校跡地についても「行方不明の子どもたちに関する包括的な調査」を直ちに始めるよう求めました。

 6月4日には国連人権理事会のテーマ別特別報告者など人権専門家9人が、カナダ政府とバチカンに全面調査を要求しました。9人による発表文は、カナダ政府に対してあらゆる寄宿学校に関する調査と、存命している可能性のある加害者の訴追や処罰を要求。バチカンには寄宿学校に関する資料を司法当局に全面公開し、疑惑についての内部調査と結果の公表を求めました。

「恥ずべき政策」

 調査によって他の場所でも遺骨が発見される可能性があります。カナダのトルドー首相は遺骨発見直後、「孤立した事件ではない」とし、「(同化政策という)恥ずべき政策に愕然(がくぜん)としている」として改めて政府の「具体的な行動」を約束したものの、その内容には触れませんでした。

 国内外の批判が高まると、同氏は4日、「カトリック教会が自ら果たした役割について責任を取ることを期待する」と語りました。

 西部バンクーバーのマイケル・ミラー大司教は2日、声明で「深い謝罪と哀悼の意」を表明。「教会は政府の植民地主義政策を実践した点で明らかに間違っていた」と述べ、資料の公開などで協力するとしました。一方でカナダカトリック司教会議はホームページで「カナダのカトリック教会は全体としては寄宿学校とは関係がなかった」としています。

カトリックの寄宿学校に収容

言葉禁止し虐待死も

 【ワシントン=島田峰隆】カナダ政府は先住民同化政策の一環として、19世紀前半から20世紀の終わりごろまで、先住民の子どもを強制的に親から切り離し、カトリック教会が運営する寄宿学校で教育する政策を進めました。被害者はいまでも深い心の傷や貧困に苦しめられています。

 同化政策を調査した「真実と和解委員会」は2015年の報告書で、学校には約15万人が送られ、病気、事故、虐待、暴力などで少なくとも4000人が死亡したと指摘。「文化的な集団虐殺」が行われたと断定しました。

 寄宿学校では先住民の言葉が禁止され、キリスト教への改宗を強要されました。粗末で暖房施設も整っていない不衛生な建物に住まわされ、労働が強要されました。性的虐待も横行していました。1945年時点で寄宿学校の子どもの死亡率はカナダのその他の子どもの約5倍でした。

 最後の寄宿学校が閉鎖されたのは1996年です。被害者の間では、貧困、アルコール依存症、家庭内暴力、高い自殺率などが問題となっています。寄宿学校でのトラウマが主要な原因だと指摘されています。

 被害者の一人は米CBSニュースで、子どもたちは懲罰に対する恐怖感で支配され、自己肯定感を奪われたと強調。「この時の感情が今日の今日までずっと自分に残っている。何に対しても十分な満足感を一度も感じたことがない」と語りました。


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