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2021年5月29日(土)

生活保護受給者向け「おくすり手帳」廃止

松本市「差別を助長」抗議に 長野

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(写真)市に対し抗議の申し入れを行う党松本市議団(左列)=20日、長野県松本市役所内

 長野県松本市は、3月末に配布した生活保護受給者専用の「おくすり手帳」を、「差別を助長する」との抗議を受け、回収し廃止することにしました。

 「おくすり手帳」は通常、処方箋を記録するために薬局で配布されます。しかし、松本市が生保受給者に配布した「おくすり手帳」は、表紙に「後発医薬品希望」と赤く印字され、裏表紙には「松本市福祉事務所」と電話番号が印字され、一目で特別な手帳とわかります。

 松本市は、薬剤師会などと協議して約30万円かけて約2000冊を作製。1年以内に医療機関へ受診した生保受給者約1200人に対し、3月から郵送などで配布しました。

 かかりつけ薬局を統一し、重複処方を防ぐことや後発医薬品の活用を促進し、医療扶助費を削減する目的と説明しています。

 受け取った受給者らは、「特別扱いの手帳は病院に行きたくなくなる」「医師の処方箋はすべて後発医薬品というわけではない。市が決めていいのか」と市に抗議。松本生活と健康を守る会(松本生健会)と松本地区社会保障推進協議会(松本社保協)は6日、市に対し、配布の中止と配布理由の説明を求める緊急要望書を提出しました。

 日本共産党の松本市議団(犬飼明美団長)も医療関係者から情報提供を受けて調査。20日、市に「人権侵害だ」と抗議し、廃止を求めました。

 2018年の生活保護法改悪で、後発医薬品使用の原則化や薬局の一元化が明記されました。しかし後発医薬品の使用が義務化されたわけではありません。

 党市議団は、「お金のあるなしで受けられる医療が変わることはあってはならない。医師の判断と本人の選択により処方されるべき薬を、本人の選択権を認めず印字することは差別医療につながり、人権侵害だ。受診抑制につながるのではないか」と抗議しました。

 市側は「一般とは違う特別なものを作ったことは問題だと思う」と答えました。

 市は5月25日、松本生健会と松本社保協、生保受給者らに、市生活保護課長が「不快な思いをさせてしまった」と謝罪。26日には臥雲義尚市長が記者会見で陳謝し、回収、廃止を発表しました。


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