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2021年5月27日(木)

主張

米黒人暴行死1年

差別許さない世界へ力合わせ

 米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警察官の暴力によって死亡して25日で1年です。事件を機に「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は大事だ)を合言葉に人種差別根絶を求める運動が世界に広がりました。米国では差別と分断をあおったトランプ氏の大統領選敗北につながりました。一方、差別の構造は根強く、非白人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)も増えています。人種や出身によって差別されることのない社会を築くことは米国だけでなく世界全体に問われる課題です。

歴史を問い直す運動も

 事件を審理していた地元裁判所の陪審団は4月22日、被告の元警官に殺人などの罪で有罪評決を言い渡しました。警官が職務中に市民を殺害しても起訴さえまれな米国で画期的なことです。

 この1年のたたかいは米国の政治を大きく動かしました。大統領選挙と同時に行われた連邦と州の議員選挙では非白人やLGBT(性的少数者)の議員が数多く誕生しました。バイデン大統領は就任後、人種差別撤廃、LGBTの権利保護の大統領令に署名しました。過去の人種差別被害への補償を決めた自治体もあらわれました。連邦議会ではヘイトクライムを防止する法案が可決され、警察改革法案が審議中です。

 西欧諸国による奴隷貿易や植民地支配の歴史にさかのぼって差別を問い直す運動が発展したことも重要な変化です。カリブ海諸国は欧州諸国による住民虐殺や搾取に改めて謝罪と賠償を要求しました。米国、英国、ベルギーでは奴隷制度や植民地の指導者の像が撤去される動きが相次ぎました。

 しかし米国では警官による黒人への銃撃、暴力が後を絶ちません。アジア系住民へのヘイトクライムが増加し、死者も出ています。トランプ前大統領は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、国民の不安に乗じて差別をあおりました。その責任は重大です。

 人種差別や他民族抑圧は米国だけの問題ではありません。中国でのウイグル人、ムスリム系住民抑圧は世界で批判を浴びています。イスラエルが占領下のパレスチナで強行する違法な入植拡大は悲惨な武力紛争を生んでいます。

 今年は人種差別根絶を誓ったダーバン宣言から20年になります。白人政権によるアパルトヘイト(人種隔離)を打ち破った南アフリカのダーバンで2001年8~9月に国連が開いた「人種主義、人種差別、排外主義および関連する不寛容に反対する世界会議」で採択された国際文書です。

ダーバン宣言の実行を

 ダーバン宣言は人種差別を「すべての人権の重大な侵害」と非難した上で、奴隷制を「人道に対する犯罪」と糾弾し、差別の歴史的原因をつくった植民地主義の再発防止を呼びかけました。人種差別が国内・国際紛争の原因となるとして、世界平和のためにも平等な人権保障が必要だと宣言しました。フロイドさんの死を受けて国連人権理事会が採択した決議もダーバン宣言の重要性を強調しました。

 「すべての人間は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利とについて平等である」とした世界人権宣言を現実のものとするために各国は人権に関する国際的取り決めの真剣な実行を迫られます。


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