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2021年3月14日(日)

主張

デジタル関連法案

個人情報保護なき活用の危険

 菅義偉政権が看板政策とする「デジタル改革」の関連法案が衆院で審議されています。地方自治の侵害、強力な権限を持つデジタル庁の新設など多くの問題点がある法案です。「デジタル社会形成基本法案」が示す基本理念には「個人情報保護」の文言がありません。プライバシー権などの人権保障をないがしろにしたまま、個人データの利活用を推進する内容です。拙速な審議で成立を図ることは許されません。

自治体独自の施策を制限

 政府は、行政のデジタル化を進め利便性を向上させるといいます。基本法案がめざす「国・地方自治体の情報システムの共同化・集約」は、自治体の業務内容を国が今後整備するシステムに合わせていくことを進めます。自治体独自の施策が抑えられ、住民自治を侵害させかねません。すでに自治体共用の情報サービスを使っている自治体では、仕様変更ができないことを口実に個別の住民要求に応えた施策を行政側が拒否する事例が各地で起きています。

 デジタル化推進のカギに位置づけられているのが、現在、税、社会保障、災害対策に限定されているマイナンバーの利用範囲の拡大です。「デジタル社会形成関係整備法案」は医師、看護師免許に関する事務や保育士の登録など国家資格保有者に関する業務をマイナンバーで行えるようにします。預貯金口座に関する二つの法案は、公的給付金の受給者をはじめとして銀行口座のマイナンバーへのひも付けを促進します。膨大な個人データが国に集まります。

 個人情報保護については、民間、行政機関、独立行政法人の三つに分散して規制している現行法を整備法案で統合します。自治体の個人情報保護条例も一元化を図ります。先進的な規制をしてきた自治体独自の基準が引き下げられる恐れがあります。多くの人が監視社会化を警戒するのは当然です。

 デジタル庁は首相が長となって強大な権限を行使します。国の情報システム整備に関する予算は同庁が一括して確保した上で各省庁に配分します。各行政機関に対する資料提出権、勧告権も設置法案に明記されています。国が補助金を出している自治体や医療、教育機関など準公共団体の予算配分やシステム運用に同庁が口を挟むことができるようになります。

 デジタル庁職員500人のうち100人以上を民間から登用します。事務方トップの「デジタル監」にも民間出身者が就くことが想定されています。国のルールづくりや予算執行が特定企業の利益に沿ったものになりかねません。総務省幹部の接待問題で明らかになった官民癒着をさらに強める法案など容認できません。

拙速審議で強行許されぬ

 デジタル関連法案は国民生活の多くの分野にかかわり、国と自治体の関係を大きく変える内容を盛り込んでいます。たばねて一括審議させることは国会軽視です。一つ一つを徹底的に審議することが民主主義のルールです。

 法案の資料には45カ所もの誤りが見つかり、平井卓也デジタル改革担当相が陳謝する事態になりました。法案の成立ありきで国会、国民への説明をないがしろにする姿勢がずさんな作業を招きました。世論を高め、廃案に追い込まなければなりません。


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