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2020年12月28日(月)

きょうの潮流

 『スイミー』という小さな魚が主人公の絵本は、社会運動とは何かを端的に教えてくれた一冊です▼広い海で楽しく暮らしていた小さな赤い魚たち。ある日マグロが襲ってきて、みんなを飲み込んでしまいます。1匹だけ真っ黒で泳ぐのが速いスイミーは逃げきり、新しく出会った仲間たちと生き延びる方法を考えます。みんなで一番大きな魚の形になって一緒に泳ぐこと。それぞれが持ち場を守って離れ離れにならないこと。スイミーは言います。「ぼくが目になろう」▼作者はレオ・レオニ(1910~99年)。その生涯と作品をたどる展覧会が東京・板橋区立美術館で開かれています。アムステルダムのユダヤ系の家庭に生まれ、イタリアで絵画とデザインの制作に従事。イタリア共産党を支持し、ファシスト政権の弾圧を受けてアメリカに亡命しました▼59年に出版された初めての絵本『あおくんときいろちゃん』には、アフリカ系アメリカ人による公民権運動の高まりに応えるように、多様な人種の子どもたちが手を取り合って遊ぶ未来への展望が描かれています▼コロナ禍の今年、野ねずみが主人公の絵本『フレデリック』に教えられたのは芸術の役割です。冬に備えてねずみたちが忙しく働く中、フレデリックは座りこんで日の光や自然の色を見つめています。雪に閉ざされた日々、みんなを力づけたのはフレデリックが紡ぎ出す豊かな言葉でした▼世界が不安と閉塞(へいそく)感に覆われている今こそ、事象の奥を見つめることが大切なのでしょう。


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