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2020年12月26日(土)

きょうの潮流

 「天使の誘惑」「今日でお別れ」「北酒場」…ふと口をつくフレーズの数々。昭和を代表する歌謡曲ヒットメーカーの、なかにし礼さんは小説家としても知られます▼2作目の『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞し、翌2001年、満州からの引き揚げ体験を描いた『赤い月』がベストセラーに。爆撃や飢え、病気で一歩間違えば死に―そんな危険に直面した1年2カ月にわたる逃避行を描きました▼「僕をつくった基礎は、戦争体験が決定的です。…満州からの命からがらの逃避行が、僕の哲学、人生観を決めました」。本紙日曜版で語っています。あの戦争を書かなくては、の強い思い。「引き揚げを体験した僕にしか多分書けない小説でした」と▼流行歌さえも七五調が主流だった時代に、「破調のリズムで日本人の心を動かしたい」とあえて七五調を使わないことを作詞の鉄則としたことも。「戦争は悪であり、愚かな行為だ」の太い思いが▼最近10年間ほどは病気とのたたかいでした。自著『がんに生きる』では「二度のがん闘病を経験した私が持つ使命は、理不尽と闘うこと」と。理不尽の最たるものが、平和を脅かし過去を否定する動きでした▼戦争、芸能界、心臓発作やがんからの生還―その人生を振り返りつつ「わが人生に悔いなし」とも語っていた、なかにしさん。「日本を絶望から希望の国へと大転換させるために、共産党には大いにがんばってほしい」。1年前、日曜版新年号に寄せた言葉に82年の生涯の思いが込められています。


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