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2020年10月30日(金)

きょうの潮流

 「学匪(がくひ)」という中国から伝わった蔑称があります。学問や知識で民心を惑わし、社会に悪影響をおよぼす学者や学生を指します。その屈辱の言葉を国の議会で投げつけられた学者がいました▼戦前に憲法学の最高峰といわれた美濃部達吉です。国家を法人とみなし天皇は法人たる国家の最高機関という学説が国体を揺るがす危険思想だとして弾圧されました。ときの政府は全著作を発禁とし、公職からも追放。不敬罪での告発、右翼による襲撃へと進んでいきました▼この排撃の嵐のなかで言論や学問の自由も奪われ、立憲主義は停止し、歯止めを失った権力の暴走が日本を破局的な戦争に引きずり込んでいった。『「天皇機関説」事件』の著者、山崎雅弘さんは今に重なる警鐘を鳴らしています▼戦後、憲法に明記された学問の自由の保障。それが、こうした歴史の反省のうえに刻まれたものだという認識はあるのか―。学術会議の人事に介入した菅首相に対し志位委員長が国会でただしました▼理由も明らかにしないまま任命を拒む侮辱。これまでの政府答弁さえすべて覆す横暴。これは全国民にとっての大問題で、強権をもって異論を排斥する政治に未来はないと▼美濃部は当時、国民一丸となって国防の強化にまい進するよう求めた軍部の小冊子にこう反論していました。「国民を奴隷的な服従生活の中に拘束して、いかにしてこのような急速な文化の発達を実現することができようか。個人的な自由こそ、実に創造の父であり、文化の母である」


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