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2020年10月17日(土)

福島第1汚染水

懸念無視し海洋放出へ

菅政権の姿勢に反発の声

 政府が、東京電力福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後にタンクにためている高濃度のトリチウム(3重水素)汚染水を、薄めて海に放出する方針を固めたことが16日、分かりました。「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」(議長=加藤勝信官房長官)を月内にも開催して決定するとみられます。水産業・観光業などへの風評被害を心配する声が高まるなか、こうした声に向き合わない菅政権の強硬な姿勢に国民から反発の声があがっています。


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(写真)東京電力福島第1原発の敷地内に並ぶ処理水の貯蔵タンク群=2018年2月、福島県大熊町

 方針が正式に決定すれば、東電が具体的な計画を策定し、原子力規制委員会による審査を経て、準備工事などを実施します。政府は実際に放出作業を開始するまでに2年程度かかるとしています。

 同原発のタンク群には、処理が未完了の汚染水を含めて123万トン以上たまっており、現行のタンク計画(約137万トン)では2022年秋ごろ満杯になる見込み。政府は、タンク増設・保管継続を求める声に背を向け、処分方法の決定を急いできました。

 この問題をめぐっては、全国漁業協同組合連合会が15、16両日、海洋放出は「わが国漁業に壊滅的な影響」を与えるとして、政府に「慎重な判断」を要請。福島県内の自治体、農林水産業や観光業、消費者団体、環境・市民団体などは、環境放出への反対や懸念、コロナ禍で国民的議論が進まない状況で拙速な判断をしないよう求める声をあげています。

 相馬市の仲卸業者(36)は「海に流すか流さないかの二択だけで、別の選択肢が考えられていないのではないか。今後、魚が売れなくなってしまうことが心配だ」と話しました。

 トリチウム汚染水(アルプス処理水) 原発事故で増え続ける高濃度の放射能汚染水を多核種除去設備(アルプス)で処理した後に残る、放射性物質トリチウムを含む水。アルプスは、セシウムやストロンチウムなど62種類の放射性物質の濃度を国の放出基準未満に低減できるとされますが、トリチウムを取り除くことはできません。

 同原発のタンク内のトリチウム汚染水濃度は1リットル当たり数十万~数百万ベクレル。平均濃度(同73万ベクレル)は、敷地内の地下水をくみ上げて海に放出する際の基準(同1500ベクレル)の約500倍です。


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