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2020年7月25日(土)

心臓病患者と社会保障

手当・年金 認定厳しく

18年調査

 全国心臓病の子どもを守る会は「心臓病児者と家族にとって必要な社会保障制度とは」と題する生活実態アンケート2018調査報告書をこのほどまとめました。全会員を対象に行ったアンケートからは、医療の進歩が患者の生活状況やかかえる問題に大きな影響を与えていることが明らかになりました。(和田育美)


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 先天性心疾患で生まれる子どもは100人に1人といわれ、治療後の状況は「オーダーメイド」といわれるほど一人ひとり違います。同会の下堂前亨事務局長は「会独自で全世代を通じた調査は初めて」と強調します。得られた結果は、国や自治体に届けて、患者・家族が安心して暮らせる福祉制度改善に向けて活用したいと語ります。

 アンケート対象は全会員で、全国948人が回答しました。(成人は18歳以上で区分)

通院の費用「足りない」

 アンケート調査によると通院を継続している小児は93・4%でした。頻度は「月1回以上」~「3カ月に1回以上」の累計数が小児は67・3%、成人では57%でした。県外に通院する患者は小児、成人ともに4人に1人以上でした。

 アンケートの自由記述欄には「通院のために交通費や宿泊費がかかるので障害者手当だけでは足りない」(40代)などの声が寄せられています。

 身体障害者手帳については、18歳を過ぎて再認定を受けると、降級・停止になるケースが多くありました。

 報告書は、要因として、認定基準と診断書様式が「18歳未満」「18歳以上」と年齢により分類され、18歳以上の成人患者に対して先天性疾患に合わない基準で判断する自治体が多いことを挙げています。

 障害児をもつ親が受給する特別児童扶養手当(特児)は重症疾患であっても受給率は半数以下の41・2%にとどまりました。身体障害者手帳1級の病児の親でも3割が受給できていませんでした。報告書は厳しい認定の現状を表していると指摘します。(グラフ(上))

 自由記述欄には「特児が打ち切りになった。薬は8種類飲み…チアノーゼ(唇や指先など末梢=まっしょう=が青紫色になる状態)もあるのに」「医師からは現状維持か悪くなると言われた。特児が来年打ち切られると困る(小学生になると多分該当しなくなる)」と寄せられています。

 児童自身が受給する障害児福祉手当の受給率は24%と低く、報告書は認定基準そのものが厳しいと指摘しています。

 20歳になった心臓病者の所得保障制度として障害年金があります。認定が厳しく、報告書は受給している人も低年金と指摘します。

 常時介護が必要な障害者には年金とは別に特別障害者手当があり、認定基準は障害年金よりもさらに厳しくなっています。

 障害年金の受給「あり」と答えた人は31・3%でした。受給していない患者のうち「受給していたが打ち切られた、または、申請したが非該当になった」と回答したのは24・6%。身体障害者手帳を取得していても、障害年金の受給率は3割と低くなっています。(グラフ(下))

 特別障害者手当は受給「あり」と答えた人は7・1%でした。

 患者の暮らしに関して報告書は、通学や通勤への悩み、不安を紹介しています。

 通勤については「通院は面接時はOKでも入社後は通院をやめるように指導される」(30代)など記述がありました。

医療は進歩 新たな問題

 延命が難しかった先天性心疾患患者が医療の進歩により、成人期を迎えるようになり、新たな問題に直面していると下堂前事務局長は指摘します。

 「患者は正規労働には就きづらいが、先天性心疾患で基礎年金しかもらえないなど、経済的支えの脆弱(ぜいじゃく)さが見えてきました。障害者手帳を取得できないと医療費助成や保障を受けられない状況も改善が必要です」

 同報告書は、会のホームページで見ることができます。


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