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2020年7月17日(金)

主張

「森友」改ざん訴訟

真相語るのが安倍政権の責任

 「安倍首相、麻生大臣、私は真実が知りたいです」。国有地を不当な安値で払い下げた「森友学園」問題に関連し、公文書の改ざんなどを強いられて自殺した財務省近畿財務局の元職員・赤木俊夫さんの妻・雅子さんが、国と当時の理財局長・佐川宣寿氏に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が開かれました。俊夫さんが残した遺書や手記には局長らから改ざんを指示されたことが生々しくつづられていますが、安倍晋三首相も麻生太郎財務相も再調査に応じません。初弁論での妻の叫びを、首相らは真剣に受け止めるべきです。

国政私物化の象徴

 俊夫さんの自殺は、人事院によって「公務災害」と認定されました。しかし政府側は、なぜ俊夫さんが死に追い込まれていったのか十分説明しようとせず、資料も黒塗りのものしか出しません。雅子さんが損害賠償を求めて提訴したのは、誰のどのような指示で俊夫さんが改ざんを強制されたのか、真実を知りたいとの思いからです。

 「森友」問題は2017年2月に発覚しました。国有地の不当な処分で、安倍首相や妻の昭恵氏の関与が浮かび上がりました。首相が「私や妻の昭恵が関係していれば、首相も国会議員も辞める」と国会で答弁したのを契機に、それに合わせて佐川局長らが国会で虚偽答弁を行い、公文書の廃棄・改ざんまで指示したとされる問題です。首相と理事長が親密な関係にあった「加計学園」の獣医学部開設や、「桜を見る会」への支持者の大量招待にもつながる安倍政権の国政私物化の象徴ともいえます。

 世論の批判を浴びる中、財務省は18年6月に調査報告をまとめました。しかし、佐川局長が改ざんを方向づけたとはしたものの、「具体的な指示はなかった」とごまかし、監督責任がある麻生財務相も形式的な処分で済ませました。与党は、国会での再喚問にも応じていません。

 雅子さんが今年3月、改ざんを強いられ18年3月に自殺した俊夫さんの手記などを公表し、新しい事実を明らかにして再調査を求めたのに対しても、安倍首相や麻生財務相は、財務省のこれまでの調査と「大きな乖離(かいり)はない」と言って、再調査に応えません。

 雅子さんが再調査を求めて始めたインターネット署名は、35万人を超える賛同を得ました。市民団体が始めた佐川局長の証人喚問を要求する署名も13万人分を突破しました。世論調査でも、「再調査が必要」は7割以上です。

 安倍政権が再調査さえ拒否するのは、最愛の夫を亡くし、訴訟にも踏み切った妻の気持ちを踏みにじるだけでなく、国民世論にも逆らうものです。人の命は何よりも重いと考えるのなら、安倍政権は直ちに再調査し、国民の前に真相を明らかにすべきです。

妻の叫びに向き合え

 雅子さんが初弁論で、安倍首相や昭恵氏、麻生財務相らの名前を挙げ、真相を明かしてほしいと訴えたのは、「私の雇い主は日本国民」といっていた夫の遺志を継ぎ、まじめに働く人が二度と悲劇にあってほしくないという強い願いからです。

 再調査は政権に求められる最低限の責任です。夫を理不尽な死で奪われた遺族をはじめ国民の声に背を向け続ける政治家には、政権を担う資格はありません。


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