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2020年5月30日(土)

主張

国民投票法の改定

改憲策動をきっぱり断念せよ

 衆院憲法審査会が今の通常国会で初めて開かれ、改憲の手続きを定めた国民投票法をめぐる問題について議員の間で討議が行われました。自民党議員らは国民投票法改定案の早期成立を主張しました。しかし、改憲を行うための法律である同法を改定する理由は、全くありません。ましてや新型コロナウイルス感染対策に集中すべき時に、国民の間で議論が大きく分かれる改憲の議論を加速することなど論外です。

議論の“呼び水”狙う

 国民投票法は、改憲を掲げる安倍晋三首相が、第1次政権時代の2007年に制定を強行し、10年に施行されました。同法改定案は18年6月に自民、公明の与党、日本維新の会などが提出しました。共通投票所制度の創設や洋上投票の対象拡大などが改定案の中身ですが、改憲議論の“呼び水”にしようという狙いは明らかです。

 安倍首相は17年5月の憲法記念日に憲法9条に自衛隊を明記する明文改憲を打ち出し、任期中に改憲することを繰り返し強調しています。そのさなかに持ち出されている国民投票法改定案は、改憲策動を進めやすくするための“土俵づくり”に他なりません。

 もともと改憲を実施するための国民投票法は必要のない法律です。しかも、最低投票率の規定がないことをはじめ、テレビやラジオ、インターネットなどを使った広告も野放しにすることを許すなど欠陥だらけです。改定案は、そうした根本的な欠陥には手を付けていません。早期成立に向けて採決をすることなど許されません。

 国民世論は、いま改憲議論をすることを求めていません。5月3日の憲法記念日に際して、各メディアが報道した憲法についての世論調査は、そのことをはっきり示しています。「朝日」では、「国会での憲法改正議論」を「急ぐ必要がない」が72%で、「安倍政権のもとでの改憲」に「反対」は58%となり昨年の調査より増加しました。共同通信では、安倍政権下での改憲に「反対」が58%となりました。NHKでは「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」が78%を占めて、「憲法改正の議論を進めるべき」の13%を大きく上回りました。安倍政権の下での改憲に反対は、圧倒的多数の声です。

 国民投票法改定案が提出されてから2年近くがたちます。この間、6回開かれた国会の憲法審査会でほとんど審議されないのも、国民世論の反映です。安倍首相が固執する自民党改憲案の提示もできないままです。首相の改憲へのスケジュールは行き詰まっています。国民が望んでいない改憲への策動はきっぱり断念すべきです。

コロナに便乗許されぬ

 憲法審査会で、自民党や日本維新の会の議員は、コロナへの対処を理由に、憲法に緊急事態条項を創設する議論を急ぐよう求めました。しかし、コロナ対策と改憲をからめることは、無理があります。緊急事態条項は、政府に超法規的な権限を与え、人権を制限・抑圧する危険があります。コロナに乗じて改憲を推し進めることは大問題です。コロナで国民の命と暮らしが脅かされる中、憲法が定める生存権や財産権を国民に保障するための議論こそ重要です。それは憲法審査会でなく、予算委員会などで行うべきです。憲法審査会を動かす必要はありません。


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