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2020年5月28日(木)

きょうの潮流

 人類に火をあたえ、文明を大きく発達させたプロメテウス。ギリシャ神話のそれは一方で武器をつくり、人間に争いや苦難をもたらす科学の戒めにも。原子力とともによく例えられるのがインターネットです▼私たちのくらしのなかに普及し始めてから四半世紀。だれもが使える便利な道具はいまや世に欠かせない存在として、次々に新しい機能やサービスを加えています。さまざまな問題や危険を内包しながら▼ツイッターなどの匿名によるひぼう中傷に悩んでいたプロレスラーの木村花さんが亡くなりました。男女のリアルな共同生活を映す番組に出演。そこでの言動をめぐり、人格をおとしめる投稿がネット上でくり返されていたといいます▼自身を隠したまま、他人に危害や言葉の暴力を浴びせる。利便性の向上とともに被害の深刻さも増しています。こうしたSNSを使った攻撃に歯止めをかけ、被害者をどう救うか。現代社会に投げかけられた課題です▼「被害者に寄り添い、その痛みを理解して、適切に助言することが必要」。インターネットの人権侵害に詳しい武蔵野大の佐藤佳弘教授は安全・安心の環境をつくるためには社会全体のとりくみが欠かせないといいます▼ネット空間での悪意や憎しみは、分断や差別がひろがる社会の反映でも。これを口実に市民が自由に意見を発信できる場を規制するなら、権力支配を強めるだけです。人びとを幸せにするのか、不幸に落とすのか。プロメテウスの火は、いまも人類を試しています。


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