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2020年3月9日(月)

きょうの潮流

 カミュの小説『ペスト』が売れているそうです。伝染病に襲われ、封鎖された街で災厄と格闘する市民たち。その姿を通し、人間は不条理とどう向き合い、生きていくべきかを問いました▼古来、人類の歴史を動かし、社会を変容させた疫病。文明は感染症の「ゆりかご」といわれるように、政治や経済、文化に与えてきた影響は大きい。同時に新たな文明をうみだす契機にもなりました▼感染が拡大する新型コロナウイルス。政府がイベント自粛や一律休校を要請してから10日がすぎます。上からの独断や押しつけはくらしを混乱させ、さまざまな現場で悲鳴があがりつづけています▼緊急事態だと自由や人権を抑制するのではなく、国民の苦しみや不安に寄り添う。生活支援に手を尽くすことこそ行政の役割ではないか。一方で、必要な人や場所にマスクを融通したり、職場で勤務形態や休みを都合し合ったり、支え合って困難に立ち向かう人びとも▼専門家や現場の声に耳を傾けることは先手の対応にもつながるはず。くり返されてきた疫病禍は教訓を残しています。楽観や悲観になりすぎず、決して絶望しないこと。そして、対立や差別ではなく力を合わせることを▼カミュは小説で主人公の医師にペストとたたかう唯一の方法を口にさせています。それは「誠実さ」。自分の場合は職務を果たすことだと。独り善がりや投げやりにならず、いまやるべきことと誠実に向き合う。最も求められている人たちにこそ、伝わってほしいのですが…。


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