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2020年2月27日(木)

きょうの潮流

 この国をこよなく愛したドナルド・キーンさんが96歳で亡くなってから、1年がたちました。今月24日の命日は生前本人が当て字に使っていたことから黄犬(キーン)忌と名付けられ、しのばれました▼日本の文学や文化を理解するために源流までさかのぼった研究者には親交を深めた文化人やゆかりの地も多い。一周忌には各地で催しものが開かれ、書店ではフェアが組まれました。幅ひろい業績を顕彰する記念財団も設けられるといいます▼米ニューヨークに生まれたキーンさんが日本の文学に初めて接したのは1940年、18歳のときでした。当時コロンビア大学の2年生で偶然、『源氏物語』の英訳本に出合ったことがきっかけでした▼その後、日米が開戦。軍人になりたくなく海軍の日本語学校に入って翻訳や通訳の勉強をし、ハワイに派遣されました。そこで敵国の文学にいっそうのめり込み、日本兵の日記や手紙から狂信的な国民だと思っていた日本人の心情を知ったといいます▼いかに戦争が愚かで悪い行為か。体験者としてそれを語っていかなければならないと平和にこだわってきました。日本国憲法に思いを寄せ、本紙で9条は「大切にしたい財産」だと話したことも▼3・11後、いまこそ日本人になりたいと日本国籍を取得。福島原発の悲劇から学んで、原発再稼働は絶対にやるべきではないと主張しました。日本の文化や人びとを世界にひろめた稀有(けう)な文学者。その信念とは逆の道に進もうとする今の姿に、どんなに心を痛めているか。


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