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2020年2月17日(月)

きょうの潮流

 歴史の片隅に埋められた人物を掘り起こす。ゆるぎない信念と情熱をかたむけた発掘は、今を生きる人びとや社会に新たな光を差し込みます▼もうすぐ、小林多喜二の命日がめぐってきます。しかしその9日前、権力によって同じように命を奪われた活動家がいたことは彼ほどに知られていません。北海道・新十津川出身の西田信春(のぶはる)です▼北の大地に育まれ、物静かでやさしく、周りから好かれていた少年時代。ボート部の活動に熱中し、熱烈な恋を夢想しながら、社会科学にめざめていった東大時代。戦前の嵐のなかで社会運動にとびこみ、共産党員として活動した時代▼やがて九州の党を立て直すために赴きますが、1933年2月11日、特高によって福岡署で虐殺されました。30歳の若さで。「消息不明」で隠された死の真相が判明したのは戦後になってからでした。多喜二らと同じ時代を駆け抜けたその青年の骨格が浮かび上がる評伝が今月刊行されました▼『西田信春―甦(よみがえ)る死』(学習の友社)。同郷の元高校教諭で著者の上杉朋史(ともし)さんは自身の祖先探しのなかで存在を知ります。闘病生活の執筆で書き上げた直後に亡くなりました。「今の政治状況が西田の時代ときわめて相似的に映ることへの危機意識」。それが原動力でした▼「まじめに生きてゆくには、この道を歩むより以外に道はなかった…」。獄中にいたこともある西田は母への手紙にそう記しています。社会を変えるために命をかけた人間の、よみがえる生がそこにあります。


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