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2019年12月20日(金)

主張

大学共通テスト

延期ではなくきっぱり中止を

 2021年1月に実施される大学入学共通テストでの国語・数学の記述式問題について、萩生田光一文部科学相は17日、導入見送りを表明しました。高校生をはじめ教育関係者が声を上げ、野党が結束してたたかった大きな成果です。英語の民間試験利用を延期したこととあわせ、安倍晋三政権が推進した「入試改革」で共通テストの2本柱が破綻しました。

混乱を招いた責任重大

 英語の民間試験も国語・数学の記述式も、専門家から多くの問題点や欠陥が早くから指摘されてきました。にもかかわらず、政府・文科省は「表現力・判断力を共通テストではかる」とし「民間事業者の活用ありき」で導入を強行しようとしました。「サイレントマジョリティは賛成だ」(柴山昌彦前文科相)「身の丈にあわせて」(萩生田文科相)とうそぶき、受験生を不安に陥らせ、教育現場に混乱を招いた責任は重大です。安倍首相や「入試改革」を推進した下村博文氏ら歴代文科相は、責任を認め受験生や関係者に謝罪すべきです。

 野党の論戦で明らかになったように、共通テストの記述式導入は、(1)採点の質を確保できず採点ミスも不可避で、公正・公平性が保障されない(2)受験生の自己採点が困難になる(3)民間事業者に委託することで情報漏えいや利益相反の問題が起こる―など入試制度として失格です。表現力・判断力をはかることは、各大学が個別入試で実施する記述式で十分できます。

 英語民間試験の利用も、(1)経済的・地域的格差を広げ、教育の機会均等をそこなう(2)七つの検定試験の公平な評価が困難(3)民間事業者による採点の質の保障や情報漏えいへの危惧―など根本的欠陥が明らかになりました。

 こうした欠陥制度が、高校生をはじめ国民の批判によって強行できなくなりました。しかし、政府・自民党は、制度の延期や見送りにとどめようとしており、民間事業者活用を断念していません。ころころと制度を変えれば被害を受けるのは受験生です。共通テストをきっぱり中止し、当面は入試センター試験を存続させるべきです。

 萩生田文科相は、大臣の下に検討会議を設置し、大学入試において英語4技能(読む・聞く・話す・書く)を評価する仕組みの再検討とともに、記述式の充実策についても検討するとしています。

 しかし、今回の「入試改革」の検討・具体化に際し、関係者からの危惧や反対の声を無視し強行してきたのはなぜなのか。その経過の究明なしに、今後の真摯(しんし)な検討を期待できるはずがありません。

 安倍政権が進めた「入試改革」の背後には、「世界のグローバルな競争でたたかえる人材」をつくるため、「表現力や主体性を問う入試にすべき」「英語は民間試験で」という財界の要求がありました。それを政府機関に押しつけた決定的な起点は、安倍首相の私的諮問機関である教育再生実行会議の13年10月の提言で「外部検定試験の活用」などを打ち出したことです。安倍首相の責任は免れません。

全面的な検証が必要

 こうした経緯を含め、安倍政権の「入試改革」の全面的な検証を行うことが必要です。その検証のうえに、「民間事業者の活用ありき」ではなく、教育現場や専門家の意見をくみつくした、公正・公平な入試制度の検討を求めます。


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