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2019年12月3日(火)

「女性・戦争・人権」学会大会in京都

ジェンダー・バッシングと歴史修正主義に抗して

朝岡晶子

 「女性・戦争・人権」学会の2019年度大会が10月27日、同志社大学で開催され、「学問の自由と政治―フェミニズム・バッシングの歴史と現在」をテーマにしたシンポジウムが行われました。

 パネリストの能川元一氏(神戸学院大学)は、1990年代前半から今日までの右派論壇における日本軍「慰安婦」をめぐる言説の連続性と変化について報告しました。

 96年検定の中学校歴史教科書のすべてに「慰安婦」が記述されたことや、国際社会からの批判などに対して、「慰安婦」問題のバックラッシュ(揺り戻し)が開始されたと指摘。とくに第2次安倍政権成立以降、歴史修正主義者による「歴史戦」(歴史問題を「戦場」とする戦い)キャンペーンが開始されたといいます。

政治参加を奪う

 牟田和恵氏(大阪大学)は、フェミニズム/ジェンダー・バッシングによって失われてきたものと政治介入について報告しました。フェミニズム・バッシングは、19世紀末以降の、女性が参政権を求めた運動当初からあったことを紹介し、日本では、1999年の男女共同参画基本法制定直後からジェンダー・バッシングが始まったと指摘。ジェンダー・フリーは家族や伝統を破壊するものとされ、その攻撃が性教育にまで及んだことを批判しました。

 そして、昨今のフェミニズム研究に文科省の科学研究費を支給するなという攻撃や、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」への妨害など、「慰安婦」問題や性をテーマにしたジェンダー研究や表現へと続くこの20年来のバッシングによって失われてきたものは、とてつもなく大きいと述べました。

 矢野久美子氏(フェリス女学院大学)は、ナチスにおける大量虐殺を批判し、全体主義について研究したハンナ・アーレントのテキストを通して、今日の状況を読み解きました。

 討論者の倉橋耕平氏(立命館大学)は3人の報告を受けて、「歴史修正主義と性・女性の問題は強くかかわっている」と述べ、フェミニズム/ジェンダー・バッシングによって、人々が政治にアクセスしたり表現したりする空間が奪われてきたと指摘しました。

声上げる大切さ

 討論では、歴史修正主義者が学問的分野に侵入しようとしていることや、国連など国際的な場で活動を展開していることへの危惧が語られ、議論されました。前田朗氏(東京造形大学)は、ここ数年、国連人権理事会や国連差別撤廃委員会などに自民党の杉田水脈衆院議員らが参加し、「アイヌ民族はいない」「琉球民族は日本民族である」などと主張しており、「いまは相手にされていないが、今後彼らに対抗する組織的な運動が必要ではないか」と発言しました。

 牟田氏は、安倍晋三氏が首相になり、戦後最大の長期政権になったことと右派の台頭の関係性を指摘し、「私たちはさまざまな運動とつながることで反攻していく必要がある」と提起。韓国で♯MeToo運動が盛り上がったのは、「慰安婦」問題への社会の理解や支援を通じて、女性自らが性を語ることについて時間をかけて認識を変え、社会を変えてきたことと関係していると述べ、日本でも女性たち自身が声を上げることの大切さと、それをサポートしていく運動の重要性を強調しました。

 植民地支配や侵略戦争、そのなかでの戦時性暴力である日本軍「慰安婦」を否定する勢力と、安倍首相の歴史観がきわめて似通っているところに、今日の日本社会の深刻さがあります。国際的な#MeToo運動、そして国内で声を上げている市民と連帯して、日本社会におけるジェンダー主流化(注)をめざしながら、フェミニズム/ジェンダー・バッシングと親和性の高い歴史修正主義に抗していくことが求められています。

(あさおか・あきこ 党学術・文化委員会事務局員)

*ジェンダー主流化

政治、経済、社会などの領域のあらゆる政策・システムにおいて、ジェンダー平等の視点を取り込むこと


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