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2019年6月4日(火)

「フェミ科研費裁判」

研究者が杉田水脈衆院議員を批判

中傷と学問への介入許さず

 ジェンダー・フェミニズム研究者4人が、自民党の杉田水脈衆院議員を名誉毀損による不法行為で提訴した損害賠償請求事件の第1回口頭弁論が5月24日、京都地方裁判所大法廷で開かれました。

 「国会議員の科研費介入とフェミニズムバッシングを許さない裁判」(フェミ科研費裁判)と呼ばれるこの裁判で杉田氏を提訴したのは、「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」研究グループの共同研究者である、牟田和恵大阪大学教授、岡野八代同志社大学教授、伊田久美子大阪府立大学教授、古久保さくら大阪市立大学教授の4人。

男女平等に逆行

 杉田氏は、2018年来、「反日学者に科研費を与えるな」という攻撃をインターネットテレビや自身のツイッターなどでくり返し、国会質問でも取り上げてきました。同年3月にはフォロワー(13万人超)に向けて科研費について検索することができるサイト先を示し、「誰がどんな研究で幾ら貰ったかすぐわかります。『慰安婦』とか『徴用工』とか『フェミニズム』とか入れて検索もできます」とツイート。こうした扇動により、ネット上では一部の研究者に対する誹謗中傷が起きました。

 4月には、牟田氏に対して「学問の自由は尊重します。が、ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権ではありません。国益に反する研究は自費でお願いいたします。我々の税金を反日活動に使われることに納得いかない」と書くなど、公正に審査された研究に対して根拠のない批判をくり返し、相当数の拡散がされています。

 24日の口頭弁論に被告の杉田氏と代理人は欠席しました。意見陳述を行った原告の牟田氏は、「慰安婦」研究に対する「ねつ造」発言は、日本政府の公式見解をも否定すると指摘。ジェンダー平等実現のための研究への杉田氏の無知と無理解からの中傷は、男女平等を推進すべき国会議員の立場に逆行すると批判しました。そして、牟田氏らの科研費に不正使用があるかのような非難は「学問上の常識を知らず杜撰」であるとし、「裁判所にはこの屈辱を理解していただきたい」と述べて意見陳述を締めくくりました。

知に対する嘲笑

 閉廷後、法廷に入りきれなかった人も含め200人を超える支援者で埋まった集会では、弁護団の報告のあと、原告4人が発言しました。牟田氏とともに杉田氏から名前を挙げて批判された岡野氏は「25年以上『慰安婦』に対する研究をしてきたが、こんな侮辱は初めて。これは人類が積み上げてきた知に対する嘲笑であり、日本社会の現状を表してもいる」と発言。

 伊田氏は「女性のセクシュアリティーに関する研究が価値のないことのように中傷された。研究を切り開いてきた世代、後に続く世代にも冷や水を浴びせる。国会議員の発言として、今後の『忖度』も気になる」と述べ、科研費の選考や政府の政策への影響に不安を示し、古久保氏は「杉田氏の発言を許せば、ジェンダー平等・セクシュアリティー平等教育に大きな打撃を与える。ここで歯止めをかけなければならない」と原告団の一員に加わった理由を語りました。

 会場からは近現代史研究者の住友陽文さん、ジャーナリストの竹信三恵子さん、フリーライターの李信恵さんらが裁判の重要性などについて発言しました。

 杉田氏は日本維新の会から自民党にくら替えした経歴を持ち、「新しい歴史教科書をつくる会」の理事も務めています。科研費への攻撃のみならず、LGBTのカップルを「生産性がない」と中傷するなど国会議員としての資質が問われており、杉田氏を公認する自民党・安倍政権の責任も同時に追及されるべきです。

 裁判への支援とともに、学術研究への政治的介入を許さず、ジェンダー平等社会をめざす世論と運動の発展が求められています。

(朝岡晶子 党学術・文化委員会事務局員)

*科研費(科学研究費補助金)

各分野の専門家の審査で選ばれた「独創的・先駆的な研究」に対し、文部科学省が交付する助成金


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